ヒトの乳癌のモデルとも言われている「犬の乳腺腫瘍」では、多角的な視点・アプローチから様々な研究が行われており、その一つに、診断や予後判定に有用なバイオマーカーの開発が挙げられる(例:Hsp90B1遺伝子、iNOS/COX-2/VEGFなど)。
そのような背景の中、台湾の大学らは、ヒトの乳癌において予後不良を示す好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin、NGAL)とマトリックスメタロプロテイナーゼ9(matrix metalloproteinase9、MMP9)の複合体(NGAL/MMP9)に着目して、犬の乳腺腫瘍の病態解析を実施して、以下のような結果が得られたことを発表した。
<犬の乳腺腫瘍とNGAL/MMP9の関連性>
・NGALは、臨床上健康な個体よりも、乳腺腫瘍に罹患した個体で減少する(転移性乳癌にて顕著)
・MMP9は、NGALとは反対に、悪性度が高まるにつれて増加する
・NGAL/MMP9は、腫瘍を有する犬の乳腺組織および尿からのみ検出される
上記のことから、尿中NGAL/MMP9は、犬の乳腺腫瘍を疑い診断するために利用できるマーカーとなり得ると思われる。よって、今回紹介した研究に用いられた尿中NGAL/MMP9測定方法が商業化され、一次診療施設でも実践できる手法として普及していくことに期待している。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31050171