ニュース

ペプトイド系抗生剤~獣医療のために開発された新しい抗生剤~

投稿者:武井 昭紘

現在、犬の膿皮症では、Staphylococcus pseudintermediusおよびPseudomonas aeruginosaなどの細菌感染が病態の形成に深く関与していると考えられているものの、既存の薬剤に耐性を獲得した株の出現によって、一部の症例への抗生剤療法が奏効しない状況が発生している。故に、耐性菌に有効な抗生剤の開発・流通が常に望まれており、ヒト用に製品化された新薬を獣医療へと応用する臨床試験が毎日のように行われている。しかし、ヒトと密に接するペットに「ヒト用」の新しい抗生剤を使用すれば、いずれ、ペットは耐性菌を抱え、そのオーナーの健康をも脅かすというジレンマに陥る可能性が生じることは避けられないのも事実である。

そこで、コペンハーゲン大学らは、「獣医療のために」新しい抗生剤を開発する研究を発表した。なお、同剤は、ペプトイド化合物(側鎖の位置がペプチドとは異なる物質)に分類される抗生剤とされており、文献内では「peptide-peptoid hybrid B1」と呼称されている。加えて、このペプトイド系抗生剤は、前述の2種の細菌に対する抗菌活性を有するとともに、クリーム状の剤型に適しているとのことで、コペンハーゲン大学らは、全身投与をする製剤としてではなく、局所治療薬として、peptide-peptoid hybrid B1が普及していくことを期待している。

上記のことから、耐性菌の感染に起因する犬の膿皮症の「患部だけに」抗生剤療法を適応できる「動物用の」新薬として、peptide-peptoid hybrid B1は有望であると考えられる。よって、今後、人体薬に依存せず、オーナーの健康被害を回避する獣医療を確立するためにも、ペプトイド系抗生剤が小動物臨床へと普及していくことを願っている。

(画像はイメージです)
更に研究が進められ、ペプトイド系抗生剤のデメリットである半減期の短さが改良されていくことも、併せて期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30842436


コメントする