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突然死を起こすと言われているボルゾイを循環器学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

ロシア原産のボルゾイは、サイドハウンド系に属する比較的希少な品種で、迷信あるいは逸話のように突然死をすると言われている大型犬である。では何故、彼らは突然死に陥るのだろうか。その謎を解明することは、ボルゾイ、引いては犬全体の福祉を向上し、健康を増進するキッカケになるものと思われる。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、突然死と心臓疾患の関連性を調べるべく、循環器専門医が診察したボルゾイのデータを解析する研究を行った。すると、14軒の動物病院から20年間分、頭数にして150匹以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ボルゾイの突然死と心臓疾患◆
・52%が繁殖前の健康チェックで受診した
・18%は不整脈の精査であった
・32%が心電図検査を受けた
・86%(①)が心エコー図検査を受けた
・①の65%(②)の心臓は構造的に正常であった
・②の19%(③)で心室性不整脈が確認された
・②の47%で軽度の房室弁逆流が認められた
・最も一般的な先天性疾患は三尖弁の異常であった(母集団の約4%)
・約8%の症例が僧帽弁の粘液腫様変性と診断された
・約9%が拡張型心筋症と診断された
・③の76%における心臓の構造は正常または軽度の異常であった
・③の20%の家系に突然死をしたボルゾイが居た
・長期の経過が追跡できた55匹の5%(3匹)が突然死をしていた

 

上記のことから、ボルゾイという品種には不整脈、弁膜疾患、心筋症を発症する個体がおり、突然死をするケースや突然死をした家族を持つ場合が珍しくないことが窺える。よって、今後、彼らの突然死の原因を追求する研究が進み、循環器疾患との因果関係が明らかになり、健康診断のタイミングや治療法・予防法の議論が深まることを期待している。

弁膜疾患の90%以上が軽度だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1102494/full


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