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発熱と黄疸とメレナを呈した4ヶ月齢の子犬が発症した疾患

投稿者:武井 昭紘

東欧に位置するブルガリアから西欧に輸入された生後4ヶ月の子犬(雑種、メス)が、元気消失、発熱、黄疸、メレナを呈した。症例報告を行ったオーストリアの獣医科大学によると、身体検査にて腹痛、採血時に出血傾向が認められ、血液検査では貧血、白血球の左方移動(増多症を伴わない)、肝酵素の上昇、凝固系の異常も確認されたという。一体、彼女の身に何が起きたのだろうか。

更に、低アルブミン血症に伴う浮腫が発現する。その病状は、輸血療法が必要だと判断されるほどに悪化していった。しかし、幸いなことに、全血や血漿を用いた輸血療法で臨床症状は改善。無事、退院となった。原因を追求するべく行われた尿検査(PCR検査)において、犬アデノウイルス-1が検出されたという。

前述したカルテの内容から推測するに、彼女は伝染性肝炎を発症していたのだろう。犬のワクチン接種率が高い西欧では珍しい感染症である。だからこそ、細心の注意が必要だと言える。仮に皆様が勤務する動物病院にワクチン接種が不十分な子犬が訪れた時、何を鑑別疾患に入れるだろうか。どうか、その子が今回紹介した症例と同じ症状を呈していた場合は、鑑別リストに必ず伝染性肝炎を追加して欲しい。万が一という事態に備えて。

ワクチン接種をしていない犬猫の診察では、感染症の可能性を最後まで捨てずに診察しましょう。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36067772/


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