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尿閉解除前後の猫の血清中クレアチニンおよびSDMAの濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

本格的な冬に多いとされる猫の尿閉には、腎機能の低下が伴う場合があることが知られている。そのため、当該疾患の診察では、血液検査(腎パネル)をチェックすることが一般的となっている。そこで、疑問が浮かぶ。尿閉を解除する前の血液検査の結果は、解除後の猫の容態を示唆しているのだろうか。

冒頭のような背景の中、アメリカの大学および動物病院らは、尿閉を患い、且つ、尿閉解除(膀胱内圧の減少)のために入院した猫25匹を対象にして、臨床検査所見のデータを解析する研究を行った。なお、同研究では、①血清中SDMA濃度および②CREが解析のターゲットとなっており、尿培養が陽性の、尿閉が再発した、そしてサンプル採取が不十分な症例が除外されている。すると、尿閉解除前後で①は約42%(17.6μg/dLから10.3μg/dL)、②は約38%(2.5mg/dLから1.5mg/dL)低下することが判明したという。また、②の初診時の値は尿道カテーテル挿入から5~20日後の値と関連性があるのに対し、①の値は両区間の関連性が確認できなかったとのことだ。

上記のことから、尿閉の解除によって腎パネルの値は減少すると言えるが、初診時の①の値では解除後の猫の容態を予測することは難しいことが分かる。よって、今後、②の値を用いて予後を予測する方法を考案する研究が進み、猫の泌尿器科診療が進化を遂げることに期待している。

解除後の各検査項目の数値は、解除から24時間経過した時点のものだとのことです。また、同研究では症例の20%が尿培養陽性で除外されており、培養陽性症例の2項目の値は陰性症例よりも有意に高いことが分かっております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34894831/


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