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オーストラリアで働く獣医師が実施している猫の疼痛管理を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床において、ヒトと共通言語を持たない動物が感じている痛みを敏感に察知し、その痛みを緩和する処置を施すことは動物福祉上、大変に重要なことである。そのため、獣医師個々人、各動物病院、各地域や国で実施されている疼痛管理の実態を把握し、問題点を洗い出し対策を講じることは大切だと言えるのだ。

 

冒頭のような背景の中、アイデックスおよびベイリンガー・インゲンハイム社は、オーストラリアの獣医師を対象にして、猫の疼痛管理に関するオンライン調査を実施した。すると、500名以上の獣医師から回答が得られ、以下に示す事項が明らかになったという。

◆オーストラリアで働く獣医師が実施している猫の疼痛管理◆
・複数のオピオイドおよびNSAIDsが使用されていた
・疼痛の評価は主に獣医師(90%以上)が行っていた
・しかし84%以上の回答者は疼痛スケールを使用していなかった
・薬剤を選択する重要なポイントは「鎮痛効果」であった
・オピオイドは術前に多く使用されていた
・NSAIDsは術後に多く使用されていた
・99%の診療施設で局所麻酔薬は利用可能であったが、回答者の55%のみが使用していた

 

上記のことから、一般的に使われているオピオイドおよびNSAIDsには「充分な鎮痛効果」を求めるも、疼痛の評価がスケール(客観的)ではなく獣医師の主観によるものになっていることが窺える。よって、今後、猫の疼痛管理の精度を更に向上するべく、臨床獣医師が使いたいと思う疼痛スケールアプリケーションの開発と、局所麻酔薬の必要性に結論を出すための研究が進められることに期待している。

調査票は50以上の質問から構成されているとのことです。

 

参考ページ:

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X211043086


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