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昆虫に接触してアナフィラキシーを起こした犬を特定するバイオマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

何らかの物質に接触して発症することがあるアナフィラキシーは、罹患動物を重篤な状態へと誘い、時に死の転帰を辿らせてしまうことがある。一方で、その何らかの物質に接触しても全く症状を示さない動物も存在していることも事実である。では一体、彼らの間にどのような違いがあるのだろうか。その違いを知ることは、アナフィラキシーの予防と治療に新たな見解を齎すキカッケになるかも知れない。

 

そこで、オーストラリアの大学らは、①昆虫に接触してアナフィラキシーを起こした犬、②「それ」以外で重症度が高い疾患を抱える犬、そして③健康な犬を対象にして、様々なバイオマーカーの測定値を比較する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆昆虫に接触してアナフィラキシーを起こした犬の体内で変動するバイオマーカー◆
・②③よりも①でヒスタミン濃度が有意に高かった
・③よりも②③でIL-10、CCL2(炎症マーカー)、AST(肝酵素)が有意に高かった
・①のみでヒアルロン酸(血管内皮細胞の表面を覆う構造物の脱落)、ALT(肝酵素)が有意に高かった
・①のみでプロテイン C (PC) とアンチトロンビン (AT) 活性が有意に低かった
・②のみでCRP、IL-6、KC(keratinocyte chemoattractant)、ALP(肝酵素)、フィブリノゲンが有意に高かった
・①と②を鑑別できるバイオマーカーはヒスタミン濃度とCRPであった

 

上記のことから、各種バイオマーカーを利用すれば、昆虫に接触してアナフィラキシーを起こした犬を識別できることが窺える。よって、今後、当該疾患を診断するためのアルゴリズムが作成され、迅速な診断と早期の治療が実現していくことに期待している。

25匹の①、30匹の②、20匹の③が研究に参加しております。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.875339/full


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