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NSAIDの投与によって起きた消化管穿孔に対する外科手術を受けた犬の転帰に関する研究

投稿者:武井 昭紘

消炎鎮痛剤として汎用されるNASIDの使用において注意すべき点がある。それは、消化管の潰瘍が起きることであり、その潰瘍が重症となって穿孔することである。そして、穿孔が起因となって腹膜炎が生じてしまうことだ。では実際のところ、潰瘍・穿孔・腹膜炎になった動物の転帰とは一体どうなっているのだろうか。NASIDを慎重に使用することを促すためにも、万が一のトラブルが起きた場合の適切な対処方法を知る上でも、彼らの転帰を明らかにすることが重要である。

 

冒頭のような背景の中、ゲルフ大学は、NSAID投与後に胃または十二指腸が穿孔して外科手術が適応された犬11例を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆NSAIDの投与によって起きた消化管穿孔に対する外科手術を受けた犬の転帰◆
・全例が大型犬であった(22~75kg)
・平均年齢は約7歳であった
・80%の症例がステロイド剤とNSAIDの併用または高用量・高頻度・長期間のNSAID(メーカー推奨よりも多い)を投与されていた
・約70%の症例が生存し、無事に退院した
・潰瘍や穿孔のサイズと場所は死亡率を左右していなかった

 

上記のことから、多くの症例が生存することが窺える。また、NSAIDの使用自体が潰瘍・穿孔に繋がるというよりも、ある特定の使用方法(ステロイド剤との併用、過剰な用量、投与頻度が多すぎる、投与期間が長すぎる)が潰瘍・穿孔に関連していることが分かる。つまり、犬のNSAID潰瘍・消化管穿孔を防止する第一のポイントは「メーカー推奨の使用方法」を遵守することにあると言えるのではないだろうか。よって、NSAIDを投与した犬に消化管のトラブルが多いと感じている獣医師は、その使用方法を見直すことをお薦めする。

術後のフォローアップは中央値で444日(最短2日、最長1460日)だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35866930/


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