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尿路感染症の疑いがある犬の尿に含まれる耐性菌について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

昨今の耐性菌の出現状況を鑑みると、細菌感染症に対する抗生剤の使用を見直す必要に迫られていると言える。中でも、特に、耐性菌が出現するキッカケを作る「乱用」を防ぐべきなのである。では、そのためには何をすべきか。一つに、各疾患に関与する耐性菌を把握する必要があると思われる。

 

冒頭のような背景の中、イリノイ大学は、尿路感染症の疑いがある犬の尿サンプル2500件以上を対象にして、分離された細菌種と、その種が耐性を獲得した薬剤について調べる研究を行った。すると、800を超える株の検出に成功し、以下に示す事項が明らかになったという。

◆尿路感染症の疑いがある犬の尿に含まれる耐性菌◆
・最も一般的なグラム陽性菌は①Staphylococcus pseudintermedius(約17%)であった
・次いでEnterococcus faecalis(約9%)、Streptococcus canis(約6%)、Enterococcus faecium(約4%)が続いた
・最も一般的なグラム陰性菌は②Escherichia coli(約46%)であった
・次いでProteus mirabilis(約11%)、Klebsiella pneumoniae(約3%)、Pseudomonas aeruginosa(約3%)が続いた
・①はペニシリン(約57%)、ST合剤(約32%)、エンロフロキサシン(約29%)、オキサシリン(約27%)に耐性を示した
・②はアンピシリン(約31%)に耐性を示した

 

上記のことから、①にも②にも、一般の動物病院で頻用されている抗生剤(ペニシリン系とニューキノロン系)に耐性を獲得している株が含まれていることが窺える。つまり、抗生剤の乱用を防ぐとともに、耐性菌の出現状況を悪化させないために、尿サンプルの薬剤感受性試験を実施することが重要だと考えられるのだ。また、これらの細菌がヒトに感染することも考慮すると、犬のオーナーに薬剤感受性試験の大切さを説くことも必要だと思われる。

分離された株の約300がグラム陽性、約500がグラム陰性だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.867784/full


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