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去勢手術後に無尿となったワイマラナーに起きていた異変

投稿者:武井 昭紘

嗜眠、嘔吐、有痛性排尿困難。これらの症状が4日間続いたために、ワイマラナー(7ヶ月齢、30kg)がアメリカの大学に付属する高次診療施設を訪れた。BUNは160mg/dL、CREは15mg/dLを超えていた。彼は、右側の睾丸が腹腔内にあり、その摘出手術を受けたばかりであった。一体、何が起きたのだろうか。

 

腹部の触診で、腎臓の辺りに圧痛を訴えた。超音波検査では微量腹水を認め、両側の腎臓は、いわゆる「水腎症」という状態に陥っていた。原因を特定するべく、開腹手術を再び受ける。膀胱は空であった。そして、膀胱三角から追っていった両側の尿管は、右の精管とともに束になって結紮されていた。左側の尿管の一部を切除し、膀胱へと繋げる。右側の尿管にはステントが留置された。数ヶ月後、ステントは除去された。BUNとCREは基準値内に戻っていた。

 

上記のことから、尿管を誤って結紮したことが一連の「異変」の原因であることが分かる。そして、本症例は教えてくれている。潜在精巣の手術では尿管を結紮しないように細心の注意を払うべきだと。一次診療施設において、陰嚢に精巣が下りてきていない犬を診察することは珍しくない。彼らの去勢手術を実施する時は、必ず絶対に結紮部位を間違えないように気を付けて頂きたい。

左側の尿管は、手術部位に合併症を起こしたため、ステントの留置に切り替えられて治療されております。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.903638/full


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