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フランスにおけるカプノサイトファーガ感染症の疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

カプノサイトファーガ感染症は、犬や猫の口腔内に存在する細菌であるカプノサイトファーガ属による感染症で、彼らがヒトを噛み、あるいは、舐めることを一つの原因として発生することが知られている。また、感染者の一部は亡くなってしまうことでも有名である。そのため、同感染症の疫学を知ることは、公衆衛生学的に重要とされている。しかし、フランスにおけるカプノサイトファーガ感染症の実態は詳しく分かっていない。

 

そこで、フランスの大学らは、国内で発生するカプノサイトファーガ感染症の疫学を明らかにする研究を行った。なお、同研究では、21にも及ぶ診療施設が対象となって過去約10年間(2009~2018年)の発生状況が調べられており、以下に示す事項が判明したという。

◆フランスにおけるカプノサイトファーガ感染症の疫学◆
・発生件数は44例であった
・症例の約93%はC. canimorsusが病原体であった(残りの7%はC. cynodegmi
・症例の80%以上で犬との接触があった(主に咬傷が原因)
・最近の5年間で症例数は2.5倍に増加した
・主な症状は敗血症(症例の約84%)、皮膚や軟部組織の感染症(約27%)、髄膜炎・骨関節炎・心内膜炎(約5~18%)であった
・敗血症例の約3分の1がショック状態に陥った
・死亡率は11%であった
・喫煙、脾臓の摘出、糖尿病、免疫抑制剤の使用が同感染症の発症に関連していた
・アルコール依存症患者の死亡率が高かった

 

上記のことから、犬との接触がカプノサイトファーガ感染症の引き金となっており、喫煙または病歴が発症リスクや死亡リスクを上げることが窺える。よって、これらのリスクを上げる条件に当て嵌まるヒトは、犬との接触(特に咬まれること)に充分に注意をし、接触した場合は手洗いなどの対策を実践することが重要であると考えられる。また、手にケガをしている時は犬に触れないといったリスク管理をすることが望ましいと思われる。

本研究では、症例から分離された病原体はアモキシシリンクラブラン酸に感受性を示していたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35064380/


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