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乳腺癌の猫の1年生存確率に関与するバイオマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

悪性腫瘍は急速に増殖を続けるため、大量の栄養と酸素を必要としている。そのため、組織としては、低酸素状態に陥りやすく、それらを供給する血液を通す血管を常に求めているのだ。つまり、低酸素状態や「血管を求める」時に発現する因子は、悪性腫瘍の治療方針を決定し、予後を判定する有用なバイオマーカーになると考えられるのである。

そこで、台湾大学らは、乳腺癌を抱えた猫を対象にして、彼らの乳腺組織における①hypoxia-inducible factor 1 alpha (HIF-1α、低酸素状態で活性化する因子) および②vascular endothelial growth factor (VEGF、血管内皮を増殖する因子)の発現を調べる研究を行った。すると、①は約70%の症例で、②は約77%の症例で発現していることが判明するとともに、①の過剰発現はリンパ管浸潤と、②の過剰発現は生存率(1年間)の低下と有意に関連していることが確認されたという。

上記のことから、①と②は、予後の判定に利用できるマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、HIF-1αの発現を観察する病理検査が商業化されること期待し、また、HIF-1αをターゲットにした治療法が開発されていくことを願っている。

①②は、組織学的グレードおよび転移の有無とは相関していなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32375802/


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