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心臓病の犬が心不全に陥る時に起きる病状変化について解析した研究

投稿者:武井 昭紘

粘液腫様変性を伴った僧帽弁疾患(myxomatous mitral valve disease、MMVD)は、特定の犬種や中高齢の犬に多く認められる病的現象で、全身へ血液を送る心臓のポンプ機能が徐々に低下し、血液の流れが停滞していく、いわゆる、うっ血性心不全(congestive heart failure、CHF)に陥り、生死を彷徨うことのある循環器疾患である。そのため、ケースバイケースにて可能な限り早い段階で、CHFのステージ分類と治療の必要性を検討することが重要だとされているのだが、当該疾患を罹患した犬がCHFに移行するタイミングを捉える臨床検査所見については詳細に分かっていない。

 

そこで、世界各地の大学らは、犬のMMVDに対するピモベンダンの効果を検証するEPIC(The Evaluation of pimobendan in dogs with cardiomegaly caused by preclinical myxomatous mitral valve disease) studyの一環として、CHFを発症する際にMMVDの犬に起きる変化について解析する研究を行った。なお、同研究では、130匹以上のCHFを発症した犬と70匹以上の発症していない犬が参加しており、それぞれの心拍数、呼吸数、体温、体重、椎骨心臓総計(vertebral heart sum、VHS)が測定されている。すると、以下に示す結果が得られたとのことである。

◆MMVDの犬がCHFを発症する時に起きる変化◆
・CHFを発症する直前に測定値が大きく変動する
・その中で、最も早く変動する値はVHSである
・心拍数、呼吸数、VHSは増加に転じ、体温、体重は低下する

 

上記のことから、MMVDを抱える犬を継続的に診察する場合には、来院の度に心拍数、呼吸数、体温、体重を必ずモニタリングすることが大切だと言える。よって、今後、更に犬のMMVDを更に深く理解するために、CHFのステージ分類と各項目の変動幅との関連性が分析されていくことに期待している。

呼吸数は、病院と自宅の両方にて計測され、いずれもCHF発症直前に増加するとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32200574


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