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病理組織学的に虫垂炎が確認されたウサギの診療記録に関する統計学

投稿者:武井 昭紘

犬猫と比べると、消化器にトラブルを抱えたウサギは命の危機に瀕する場合が多い。そのため、彼らの消化器疾患に関するデータを纏めることは非常に重要で、それを活用して診療にあたることがウサギの健康、ひいては命を守ることに寄与すると考えられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、世界の大学らは、病理組織学的に虫垂炎が確認されたウサギの診療記録を解析する研究を行った。すると、19件の症例が集まり、以下に示す事項が明らかになったという。

◆病理組織学的に虫垂炎が確認されたウサギの診療記録に関する統計学◆
・初診時の年齢は中央値で2歳(最年少は4ヶ月、最年長は7歳)であった
・約90%の症例が夏または秋に発症していた
・約90%の症例が食欲低下、約70%が体温の異常(高体温または低体温)や低Ca血症、約半数が低血糖症を呈していた
・超音波検査を実施した症例の75%で異常所見が検出された
・CT検査を実施した2件のうち1件で異常所見が検出された
・19件のうち5件は治療を開始する前に死亡または安楽死となった
・内科的治療を受けた6件のうち3件は入院から48時間以内に死亡した
・残りの1件は入院後24時間で、1件は10日目に死亡し、1件は初診から1030日目までの生存が確認されている
・虫垂切除術に臨んだ8件のうち3件は退院を迎える前に死亡した
・残りの1件は術後113日目に死亡し、4件は初診から300日以上生存した(315~1473日)

 

上記のことから、食欲低下、体温の異常、低Ca血症、低血糖症を認め、画像診断で虫垂に異常が確認できるウサギでは虫垂炎を疑うことが重要だと思われる。更に、全体の7割以上の症例が死亡していることから、予後が悪いことをオーナーに伝えることも大切である。また、虫垂炎を発症したウサギの生死を分かつファクターを明らかにして、予防法や治療法を編み出すことが喫緊の課題なのではないだろうか。

本研究の対象となったウサギたちの虫垂には、潰瘍、炎症、壊死が認められたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34843442/


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