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片側の腎臓を摘出した猫の腎機能をサポートする幹細胞治療

投稿者:武井 昭紘

腎臓の機能が進行性に低下する慢性腎臓病(Chronic kidney disease、CKD)は、猫に良く見られる泌尿器系疾患で、彼らの死因の主要なものとして知られている。一方で、間葉系幹細胞(Mesenchymal stromal cells、MSCs)は、再生医療の主軸と目されている細胞で、その秘めた治癒力は腎臓病の治療にも効果を発揮する可能性が期待できるものとなっている。

 

そこで、動物用セルバンクを運営するGallantおよびアメリカの大学らは、片側の腎臓を摘出され、且つ、腎障害を抱える猫18匹を対象にして、子宮由来のMSCs(uterine tissue-derived MSCs、UMSCs)を静脈内に投与し、その後の腎機能の変化を観察する研究を行った。なお、同研究では、300万個のUMSCsが2週間間隔で2回投与されている。また、治療の成功は、糸球体濾過量(glomerular filtration rate、GFR)の20%増加、および、症例の50%における血漿中クレアチニン濃度(CRE)の20%低下と定義された。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆UMSCsが低下した腎機能に与える効果◆
・投与13日目~182日目(6つの時点)のGFRが有意に増加した
・150日目を除いた全ての測定においてGFRは20%増加した
・CREは成功の条件を満たさなかった
・食餌量と飲水量の有意な増加を認めた

 

上記のことから、UMSCsの静脈内投与は、CREの低下は伴わないものの、GFRを増加させる効果を持つことが窺える。つまり、同治療法には、腎機能を改善する力が秘められていると考えられるのだ。よって、今後、CREを低下させるための条件を解明する研究が進み、UMSCsがCKDに対する新しい治療法として確立されることに期待している。

本研究では、16件の有害事象が発生したとのことです(詳細はリンク先の論文をご参照下さい)。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34653723/


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