尿路疾患の1つとして、尿失禁がある。原因は、異所性尿管などの解剖学的異常、脊髄疾患などの神経学的異常、術後の発症(卵巣子宮摘出術を受けた3~5年後)などが挙げられる。海外では、尿失禁があることで安楽死を検討することもあるため、治療成績の向上は非常に重要なことである。
原因が様々ある中で、尿失禁に至る機構には、以下の要因が関わっている。
1.尿道筋の緊張・弛緩
2.尿道の長さと直径
3.尿道の弾力性
4.腹圧
複数の要因が膀胱内圧(貯尿)に関与しており、バランスが崩れることで尿失禁が起きる。この現象は、尿道括約筋機構不全症(urethral sphincter mechanism incompetence、USMI)とも呼ばれている。
診断は、主訴、身体検査所見、不妊手術の有無などで行われる。原因を詳細に探索するために、超音波検査、X線検査、CT検査が実施されることもある。
治療は、内科と外科に分かれる。内科では、αアドレナリン作動薬、エストロゲン、フェニルプロパノールアミンが使用されている。内科で改善する割合は、雌犬で60~90%、雄犬で50%以下である。内科治療で副作用が出る場合や内科治療で改善が認められない症例では、外科手術を検討することが必要となってくる。
外科手術では、膀胱内圧を維持し、貯尿できる時間を増やすことがゴールとなる。そのために、以下のことをポイントとした術式がある。
1.尿道の直径を小さくする(尿道粘膜下織にポリテトラフルオロエチレンを注入)
2.尿道の直径を小さくし、尿道を長くする(膀胱頚部挙上術、Colposuspension)
3.腹圧の影響が大きい尿失禁の解決(尿道スリング術)
4.その他(尿道固定術など)
いずれの術式であっても、尿失禁を制御できる確率(禁制率)は、13~53%程度であることから、今後、術式の臨床研究が進み、禁制率が改善されていくことを期待したい。現在、人医療では、人工尿道括約筋の埋め込み術が重度尿失禁に用いられているため、獣医療でも人工尿道括約筋が臨床応用されれば、禁制率が改善されるかも知れない。

尿失禁を抱えている症例では、貯尿できる方法が確立されることは予後に関わる重要なことである。
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