犬のリンパ腫は、皮膚、内臓、神経系など様々な場所に発生する可能性があり、無治療・加療を問わず、致死的経過を辿るリスクを伴う腫瘍性疾患である。このリンパ腫の治療の一つとして、化学療法が選択されることもあるが、抗腫瘍効果よりも副作用が強く発現する症例では治療を中断せざるを得ない状況となることも珍しくないため、化学療法剤を効率良く腫瘍組織へ分布させる手技(正常組織への影響を最小限に抑える手法)の確立が課題であると言える。
そこで、アメリカのノースカロライナ大学およびデューク大学は、犬のリンパ腫の治療における「化学療法の効率化」に関して研究を行った。両大学は、化学療法剤に対する増感効果を有するとされているマンガンポルフィリン(MnBuOE、抗酸化作用を発揮するスーパーオキシドジスムターゼの類似薬)に着目した。今回の研究では、健康な犬におけるMnBuOEの体内動態が解析されており、リンパ節(次いで腎臓・肝臓)に高濃度で分布することが明らかとなった。つまり、リンパ節、腎臓および肝臓にリンパ腫を抱えている犬に、化学療法剤の効果を増強させるMnBuOEを投与すると、既存のプロトコールにおける化学療法剤の用量を減らすこと(効率化)ができるかも知れないということが示されたのである。
今後、更なる研究が実施されて、リンパ腫の犬におけるMnBuOEの体内動態、リンパ腫に使用される化学療法剤とMnBuOEの併用時の薬物安全性試験および用量の再設定(プロトコールの改編)が検証・検討されて、MnBuOEが臨床応用されることに期待したい。

化学療法の効率化は、罹患動物の副作用を軽減するだけではなく、ペットオーナーが負担する治療費や医療廃棄物を削減する効果も期待できると思います。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5532403/


