以前、記事を作成したことがある犬の変性性脊髄症(DM)は、ヒトのALS(筋萎縮性側索硬化症)に相当する神経系疾患であるとされている。そして、ALSでは、SOD1を含めた20種類以上の遺伝子突然変異が確認されており、それぞれの変異とALSとの関連を明らかにすることがALSの治療法の確立のために重要であると考えられている。よって、①ALSにおける多様な突然変異が犬のDMにも認められるか、②確認できた突然変異が犬のDMの病態に関連しているかについて検証していくことも大切であると言える。そこで、今回紹介する以下の内容が、犬のDMの病態解明に繋がることを願って、記事を作成・アップしたいと思う。
イギリスのUCL(University College London、ロンドン大学のキャンパスの一つ)は、ALSの突然変異の一つであるvalosin-containing protein(VCP)遺伝子変異に注目して研究を行った。VCPとは、タンパク質の代謝、ミトコンドリア機能の維持、細胞死(アポトーシス)に関与している物質であり、ヒトの家族性ALSの約2%で変異を起こしていることが知られている。同大学は、iPS細胞からVCPが変異している脊髄の運動ニューロン(MW)およびアストロサイト(AC)を作製して培養することで、MWのアポトーシスが起きることを発見した。また、このアポトーシスは、MWの細胞質にTDP-43(TARDBP-gene-encoding transactive-response DNA-binding protein, 43 kDa)というタンパク質(本来は核内に存在している)が蓄積することが原因であることも解明された。
さらに、本研究では、変異が起きていないACに比較して、VCPが変異を起こしたACはMWのアポトーシスを抑制する効果を発揮する能力が低いことが示されており、MWが「生きた細胞として機能を維持する」にはACのサポートが必要であることが考えられる。
上記のVCP遺伝子の突然変異は、極限られたALSで確認されるものであるが、それに続発する「TDP-43の細胞質内蓄積」はALSの95%に認められる現象であるため、ALSの病態を進行させるMWの変性とTDP-43の局在化(細胞質内)は深く関与していることが推測できる。このことから、MWの細胞質にTDP-43が蓄積しないようにする薬剤の開発やACが有するMWの変性抑制効果の解析は、ALSの治療法を確立する上で大きな役割を担う可能性があると考えれると同時に、犬のDMに対する治療法の研究の発展・進展(人医療を小動物臨床へ応用すること)を期待できるものであると思われる。

犬のDMは完治する病気であると言える日が来るように、多くのヒトのALSおよび犬のDMに関する研究が行われることを願っております。
参考ページ:
http://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(17)30649-6


