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骨髄幹細胞を骨および軟骨形成へと誘導する調節因子が発見される

投稿者:武井 昭紘

再生医療(幹細胞治療)は、損傷・欠損すると補うことが難しい組織を再生することが出来る技術として期待されており、現在も様々な研究が続いている。その中で、骨・軟骨は生体の再生機構が働きやすい組織ではあるが、広範囲の損傷・欠損を起こすと、再生が困難となる場合もある。そこで、アメリカのウィスコンシン大学は、骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cells、BMSC)を骨や軟骨組織の再生へと誘導する調節因子を解明するための研究を行った。

同大学は、大腿骨(股関節)を人工関節へと置換する手術を受けたヒトの大腿骨頭・大腿骨頚から骨髄抽出物(10%FBS培養液を含む)を作出して、507個のタンパク質(成長因子やサイトカインなど)を検出できる抗体アレイ(antibody array)およびデンシトメトリーによって、骨髄抽出物のタンパク質を定量化した。さらに、10%FBS(骨髄抽出物なし)と比較して、骨髄抽出物の中に3倍以上の量が含有されているタンパク質を特定した(以下の4つのタンパク質が該当した)。

◆骨髄抽出物に多く含まれるタンパク質◆

・エンドセリン-1(endothelin-1、ET1)
・リポカリン-2(lipocalin-2、LCN2)
・プロラクチン(prolactin、PRL)
・マトリックスメタロペプチダーゼ 9(matrix metallopeptidase 9、MMP9)

そして、上記の4種類のタンパク質を組み合わせて、BMSCを培養して、骨または軟骨関連マーカーの有無を確認すると、LCN2およびPRLで培養した場合に、BMSCのマーカー(mRNAレベルにおいても)が増強されていることが明らかとなった。さらに、LCN2およびPRLで培養したBMSCには、老化関連マーカーのmRNAの発現が低下することも判明した。また、頭蓋骨の一部を欠損させたマウスの頭部にLCN2とPRLで処理したヒドロキシアパタイトおよびキトサンを埋め込むと、放射線不透過性組織が再生されることが確認されている。

このことから、LCN2およびPRLは、BMSCを骨・軟骨組織の再生へと誘導する作用を有していると同時に、BMSCの老化(細胞傷害)を抑制する効果も発揮することが推測できる。今後は、頭蓋、脊椎骨、体幹骨、四肢骨の形状に合わせた組織再生が可能であるかについて検討していくことが重要だと考えられる。将来的に、「調節因子(LCN2、PRL)による再生医療」が確立されることになれば、人医療および獣医療において、交通事故や腫瘍性疾患などで「失った組織の再生」が可能となり、義肢や人工関節が不要となる世界が訪れるかも知れない。

事故、災害、疾患で受けた組織の損傷を再生できる技術が一つでも多く増えていくことで、数えきれないヒトやペットのQOLが改善すると思います。

事故、災害、疾患で受けた組織の損傷を再生できる技術が一つでも多く増えていくことで、数えきれないヒトやペットのQOLが改善すると思います。

 

参考ページ:

http://www.cell.com/stem-cell-reports/fulltext/S2213-6711(17)30019-X


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