小動物臨床の獣医師には、外来および入院症例の予防・治療をする義務が課せられると同時に、公衆衛生学的な知識をペットオーナーに普及させることも業務の一環として遂行するという重要な使命がある。特に、妊娠した女性、風邪などで免疫力が低下したヒト、新生児、高齢者とペットの接触には注意喚起をすることが大切であると考えられる。しかし、今年4月にカナダのアルバータ大学が発表した研究データは、今までの公衆衛生学的観点に新たな概念を加えるキッカケとなる可能性があるものであったので、紹介したいと思う。
同大学は20年間に渡り、ペットが飼育されている家庭と飼育されていない家庭で産まれた新生児を対象として便検査による腸内細菌叢の調査を行った。すると、ペットが飼育されている家庭の新生児では、ルミノコッカス(Ruminococcus)属およびオシロスピラ(Oscillospira)属の細菌の数が有意に増加していることが判明した。また、ペットが飼育されている家庭で育った新生児では、アレルギー疾患、肥満、喘息になるリスクが軽減されることも明らかとなった。この結果から、アルバータ大学は、生後3ヶ月までに新生児がペットに暴露されることで獲得される腸内細菌叢が、病気になりにくくなる免疫機能を確立することに深く関わっている可能性があると考察している。
今後、研究が進み、ヒトの腸内細菌叢(Ruminococcus属、Oscillospira属など)とアレルギー疾患や喘息などの免疫応答が関与する病気との関連が詳細に解明されれば、「2菌種を用いたプロバイオティクスによる免疫療法」が確立されるかも知れない。そして、人医療における新しい治療法を小動物臨床に応用することで、痒みや炎症に苦しむ犬猫からアトピーおよびアレルギー症状が排除されていくことに期待したい。

犬とともに成長した新生児が獲得する免疫機能の詳細が解明することで、犬および猫の免疫応答が関与する疾患の新しい治療法が確立されることを期待します。
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