どんなに健康な動物であれ、去勢・不妊手術であれ、麻酔にはリスクがある。その最悪なケースは、死亡事故だ。そこで、読者の皆様に問う。仮に、麻酔後に動物が死亡した時、麻酔と死亡の関連性についてどう捉えているだろうか。どのように判断を下しているだろうか。そして、その判断の正確性にどれ程の自信があるだろうか。
冒頭のような背景の中、世界の大学らは、麻酔下あるいは抜管から48時間以内に死亡した犬猫を対象にして、麻酔に関連した死亡率を算出する研究を行った。なお、同研究では、3名の麻酔科医に症例データを提供し、死因を「①麻酔が原因」あるいは「②麻酔以外の原因」に振り分けてもらっている。すると、430例以上のデータが分析され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆麻酔下あるいは抜管から48時間以内に死亡した犬猫に対する麻酔の影響◆
・3名の麻酔科医はそれぞれ母集団の約69%、約61%、約13%が①だと判定した
・3名の見解が一致する確率は約30%であった
・3名の麻酔科医は検討の上、最終的に約14%が①だと判定した
・また3名の麻酔科医は検討の上、最終的に約20%が②だと判定した
・①と②の判定に関して2名以上の見解が一致する確率は約70%であった
・2名の麻酔科医の間(組み合わせは3通り)で見解が一致する確率は約47~66%であった
・結論として見解の一致率は低いと考えられた
上記のことから、麻酔科医ももってしても、①と②の判定は難しいことが窺える。つまり、一般診療施設において、麻酔下あるいは抜管から48時間以内に死亡した犬猫の死因を特定することは困難を極めると言える。よって、今後、麻酔に関連した死亡事故を判定するアルゴリズムやガイドラインの作成が進み、より安全な麻酔管理法(麻酔が掛けられるか否かの判定法を含む)が確立されることを期待している。

本研究の母集団は、麻酔を掛けられた69000匹以上の犬猫のデータから抽出しています。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40022108/


