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白内障に対する手術に臨んだ糖尿病の犬に起きた麻酔下での不整脈

投稿者:武井 昭紘

13歳齢のジャック・ラッセル・テリア(去勢オス)が白内障に対する外科手術のために麻酔に臨んだ。一つ心配なことがあるとすれば、彼は糖尿病を患っていることだった。血糖値は70mg/dL。やや低めといった状況であった。血糖値を維持するためか、生理食塩水で2倍に希釈された50%デキストロースが静脈内に投与された。速度は0.5mL/kg。ゆっくりと輸液療法は進んだ。リスク管理は万全。そう思われた矢先、事態は急変する。一体、彼の身に何が起こったのだろうか。

第一に、血糖値が異常を示した。数値にして750mg/dLオーバー。グルコースメーターの上限を超える急激な上昇が起きていた。直ちに、インスリンと乳酸リンゲルが投与された。幸い、手術は完了したのだが、一方でトラブルは続いた。動脈の拍動が超音波検査でも検知できなくなり、高血糖(500mg/dLオーバー)が継続するとともに、高カリウム血症(6.8mmol/L)にも陥ってしまった。また、心電図検査では、洞調律ではあるものの、心房の異常を疑う波形が確認された。直ちに、高カリウム血症への対応がなされる。その結果、カリウムの値は正常化した。

この一連の出来事を、論文を発表したジョージア大学はインシデントに認定した。そのため、原因について議論された。そして、最終的に重大なケアレスミスが原因であるという結論に達した。具体的には、「輸液速度が速すぎたこと」が問題であったようである。0.5mL/kgというデキストロースの輸液速度は、実際のところ10倍の5mL/kgであったことが判明した。これにより、血中のデキストロースが過剰となり、細胞内に存在していたカリウムが細胞外に移動する形となった。

読者の皆様におかれては、このインシデントから学んで頂けると幸いである。動物医療は勿論のこと、全業種業態で数値のミスは大きな損害・トラブルを生じさせる。よって、薬用量や輸液速度の計算は慎重に行い、二重三重のチェックをすることをお薦めする。

2回目に登場した血糖値、500mg/dLオーバーは生化学検査の上限です。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39986917/


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