交通事故、落下などの強い外力に生体が曝されると、骨折や神経損傷が生じ、起立不能、排便・排尿困難を含めた様々な後遺症を呈する場合がある。その中でも、神経系のトラブルは、太く大きい神経組織ほど回復する可能性が低く、現在の医療では「元の状態に戻す」ことは非常に難しい。
そこで、イランのウルミア大学は、幹細胞およびシリコン製ガイドを組み合わせた再生医療の有用性を検証した。なお、同検証では、骨髄由来マスト細胞(bone marrow derived mast cells、BMMCs)を一定量充填させたガイドをシャム(猫)の坐骨神経に移植しており、以下に示す事項が判明したとのことである。
◆幹細胞を含むガイドによる再生医療の効果◆
・S-100(神経系マーカー)の発現
・神経線維の数と太さの増大
上記のことから、本稿で紹介した幹細胞療法は、坐骨神経の損傷を修復し、麻痺を認める後肢を再び動かせるようにするための治療法を確立するキッカケとなるかも知れない。よって、今後、①ガイドに使用できる最適な素材や②再生したい神経線維の太さと必要なBMMCsの数について研究が進み、猫に限らず、ヒト・犬にも応用できる医療技術へと発展していくことを願っている。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29719840