犬猫の過体重(overweight)や肥満(obese)は、脂肪組織による気道の圧迫、関節の負担の増加、心臓への負荷、糖尿病のリスクなどの多くのトラブルの原因となることがある。そのため、オーナーにペットの体重管理および体型チェックについて正確な知識を啓蒙していくことが、獣医師(動物病院)の役割の一つと言える。しかし、小動物臨床において、ペットの過体重や肥満に関して、オーナーに指導をしようとしても、「理解が得られない」という局面に陥ることは珍しくないと推察する。
そこで、スイスのチューリッヒ大学にある動物栄養研究所(Institute of Animal Nutrition、IAN)は、飼育している犬の体型評価におけるペットオーナーと獣医師の「感覚の差」を明確にする研究を実施した。同研究には、ヴィンタートゥール(スイス)で開催されたドッグイベントの来場者と同伴した犬78例が対象となり、38品種(下記に示す通り)と雑種15匹が含まれている。
◆研究対象となった主な品種◆
・チワワ
・オーストラリアンキャトルドッグ
・ボーダーコリー
・プードル
・シェルティ
・シルクウィンハウンド
・ビーグル
・オーストラリアンシェパード
まず、ペットオーナーにアンケートを依頼して、犬種、年齢、性別、飼育環境、活動時間、栄養管理への意識などを回答してもらうことから調査がスタートした(一部複数選択可)。その中で、オーナーには、実際の体重(デジタルスケールで測定)と比較するために、愛犬の体型・体重について、①痩せている、②理想的、③過体重、④肥満を選択させると同時に、BCS(9段階)による数値化作業に参加してもらっている。その後、2人の獣医師が各個体の「臨床獣医学的なBCS」を評価して、ペットオーナーおよび獣医師の判定を統計学的に解析した(χ2検定、コルモゴロフ–スミルノフ検定)。すると、以下に記載する事項が明らかとなった。
◆研究対象となった主な品種◆
1.犬の実際の体重は18.9 ±14.1kgであり、オーナーの考える理想体重と一致。
2.全体の70%(55件)のペットオーナーが、愛犬は理想体重であると認識している。
3.オーナーによるBCSは、4.54±1.13であった。
4.獣医師によるBCSは、5.20±1.20であった。
5.オーナーと獣医師の評価には、0.77±0.59(BCSの約1段階分)の差が生じている。
上記のことから、イベント会場に居たペットオーナーと獣医師の犬の体重・体型評価には、統計学的に有意な差(P < 0.001)があることが判明した。つまり、オーナーの判定によるBCSは全体的に低く、愛犬の体型を「過小評価」しているということになる。よって、動物病院に来院するペットオーナーと獣医師にも、今回の研究と類似した「感覚の差」が存在していることを前提として、愛犬の体重管理について慎重かつ適切な説明を行って「差を埋める」ことで、過体重または肥満の治療は成功へと導かれると考えられる。
また、今回の研究では、犬の体重・体型に関するオーナーの情報源は、獣医師(20%)やペット栄養管理士(14%)以外に、インターネット(20%)、家族・友人(各10%)、ドックトレーナー(10%)、関連書籍(8%)、ブリーダー(6%)、自身の経験則(42%)、情報源なし(15%)と分散していることも確認されているため、統一した見解を啓蒙する組織やイベント(ペットの体重管理月間など)を計画・立案することが理想的であると思われる。

体重評価に限らず、ペットオーナーと獣医師の様々な「感覚の差」を解消することが出来れば、診療業務は大幅に時間短縮(効率化)をすることが出来るのではないでしょうか。
参考ページ:
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jpn.12615/full


