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米国糸状虫学会が纏めたフィラリア症に関するABC~知っておきたい26の知識~

投稿者:武井 昭紘

動物病院に勤める獣医師・動物看護師は、犬猫を初めて飼い始めたオーナーやフィラリア予防をしていないオーナーに対して、フィラリア、フィラリア予防の重要性、フィラリア症の脅威について説明することがある。その際、臨床経験者など上手く整理して話を進められるヒトは問題ないのだが、新人スタッフなど説明が拙くなってしまうヒトは、もどかしい想いを抱くことになるだろう。そこで、米国糸状虫学会(American Heartworm Society、AHS)が纏めた、フィラリア症に関するABCを紹介したいと思う。ここには、26もの知っておきたい知識が詰め込まれている。自分自身の頭の中を整理するためにも、説明が上手くなるためにも、全てを確認して頂けると幸いである。なお、詳細は以下の通りだ。

 

◆フィラリア症に関するABC~知っておきたい26の知識~◆
A.フィラリアは心臓や肺はもとより動脈(arteries)にも寄生する
B.わずか3滴の血液(blood)でフィラリア検査は完結する
C.1匹のフィラリア成虫の寄生で猫(cat)は亡くなることがある
D.アメリカでは約100万匹の犬(dogs)がフィラリア症で苦しんでいる
E.犬のフィラリア症の治療はフィラリア予防よりも高額(expensive)になる
F.小さな心臓を持つフェレット(ferrets)では数匹のフィラリア成虫の寄生が致命的となる
G.フィラリア予防の開始時期を予測(guess)するよりも年中予防をする方が効率的である
H.重度のフィラリア症は心不全(heart)へと発展する
I.犬のフィラリア症は3回のメラルソミンの注射(injections)で治療される
J.犬が6月(June)にフィラリアに感染した場合、それが検査で判明するのは来年の1月(January)以降である
K.子猫(kittens)の時期からフィラリア予防は始められる
L.ペットの体内でフィラリアは小さな幼虫(larvae)から15~30cm程の長い成虫に変わる
M.フィラリアに感染した蚊(mosquitoes)が動物を吸血することでフィラリア症は拡大する
N.自然療法(natural remedies:生活習慣の改善や薬草を使った療法)ではなく、処方薬によってのみフィラリア予防は可能となる
O.室内飼育のペットも屋外(outdoor)に出られるペットも等しくフィラリアに感染する
P.100%に近い確率でフィラリア症は予防(preventable)できる
Q.フィラリア症の治療をしている犬は合併症をさけるために安静(quiet)にしていなければならない
R.予防をしていないペットがフィラリアに感染するリスク(risk)は高い
S.50州(states)全てでフィラリア症は確認されている
T.猫やフェレットのフィラリア症の治療(treatment)として承認されているものは存在しない
U.コヨーテなどの郊外(urban)に生息する野生動物がフィラリアの伝播に関与している
V.獣医師(veterinarian)だけがフィラリア予防薬を処方できる
W.AHSはフィラリアの居ない世界を目指している
X.X線検査(X-rays)はフィラリア症に対する治療方針の決定に有用である
Y.1年中(year-round)のフィラリア予防を推奨する
Z.ライオン、トラ、アシカ、アザラシ、トドなどの動物園(zoo)で飼育される動物もフィラリア症を発症する

 

これらの知識のうち、IやSは「アメリカでは」という話になるかも知れないが、その他については日本でも通用するだろう(Uはキツネまたはタヌキに読み替える)。読者の皆様は、どれだけの項目を既に知っていただろうか。そして、新たに知った項目はあっただろうか。本稿をキッカケに頭が整理できた獣医師・動物看護師の方々がおられるならば、その知識を存分に使って、「フィラリアなるもの」をペットオーナーに啓蒙して頂きたい。

 

参考ツイート:https://twitter.com/AHS_Think12/status/1432810559376855044


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