一次診療施設にて良く遭遇する犬のアトピー性皮膚炎(canine atopic dermatitis、AD)は、罹患個体の臨床症状・病歴に基づいた診断基準および鑑別リストに挙がった他の疾患の除外をもって診断されることが一般的で、皮膚科診療全体の1割前後を占めるとされている。しかし、一方で、病院または獣医師によっては、皮膚疾患症例の最大6割がADと診断されていると言われることもあり、既存の診断方法では、個人の主観が強く反映されてしまうデメリットが解消できていないのが現状である。
そのような背景の中、インドの大学は、①ADと診断された犬と②臨床上健康な犬における血液検査所見の相違点について検証する研究を行った。なお、同研究では、血液の細胞成分(自動血球計算機を使用)および血清中のIL-17、IL-31、総IgE濃度が解析されるとともに、痒みを評価するスケール(pruritus Visual Analog Scale、pVAS)による病状のスコア化も実施され、以下に示す結果が得られている。
◆ADと診断された犬の血液検査所見(②と比較した結果)◆
1.血清中のIL-17、IL-31、総IgE濃度が有意に高値を示す
2.総白血球数、好中球数、好酸球数が有意に上昇する
3.総白血球数に占める好中球・好酸球の割合が有意に高くなる
4.血清中IL-31濃度とpVASのスコアは正の相関関係にある
これを受け、同大学は、白血球の数的変化を伴う血清中IL-17、IL-31、総IgE濃度の上昇は、ADと関連しているのではないかと結論づけている。
上記のことから、今回紹介した所見がADを診断する一つの基準として世界的に認められれば、冒頭で述べた「主観」を限りなく排除できるものと思われる。よって、症例数を大規模化して、欧米や日本でも同様の検証が進められ、一つ一つの項目についてADを診断するための参照値が設定されていくことに期待している。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31218782