犬のアトピーは、母集団の3~15%が罹患していると推計されており、獣医師によっては、最大で、担当している皮膚科症例の約6割をアトピーと診断しているとも言われる。また、この疾患は根治が難しく、症状をコントロールしながら、「上手く付き合っていく」ことが重要であると考えられている。しかし、既存の治療法のみでは、犬のアトピーが抱える問題点(病状)全てを解決できないという現状であり、多角的な視野から新たなアプローチを検討することが必要であると思われる。
そこで、イタリアの研究機関およびトリノ大学は、犬のアトピーに対する皮膚科クリームの有効性について、研究を行なった。同研究には、アトピー性皮膚炎と、それに続発する二次感染を起こした犬38例が参加しており、2週間の治療(毎日の外用塗布)が施されている。なお、今回使用したクリーム状の外用薬は、感染防御機能を有するラクトフェリンの活性を強化した「ラクトフェリシン」を主成分としている(皮膚保護剤のベルバスコシドも含有)。
研究の結果、ラクトフェリシンに起因する有害事象は認められずに、スコアリングされた臨床症状が改善することが明らかとなり、犬のアトピーに対するラクトフェリシンの効果が示されたとのことである。
今後、ラクトフェリシンのアトピー改善効果に関するメカニズムが詳細に解析され、小動物臨床に応用されることに期待したい。
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