臨床検査で健康と判定される個体であっても、100%安全な麻酔法は存在しないため、心肺停止などのリスクをゼロにすることは不可能とされており、この概念の根底には、例えば、以下に示す要因が深く関わっている。
◆麻酔リスクを変動させるファクターの一例◆
①ヒト(経験、体調、心理状態)
②動物(代謝経路、呼吸循環器の状態)
③麻酔装置(回路やモニターの不具合)
④手技(機器の使用方法)
⑤薬剤(過剰投与、副作用)
つまり、今の獣医療は、①~⑤が絡み合っって作り出す「複雑な麻酔リスク」を完璧に掌握できないという課題点を抱えていると言える。
そこで、アメリカの大学らは、麻酔中に動物が心停止を起こす要因について、クリティカル・インシデント法(critical incident technique、CIT)を適応する研究を行い、最終的に、①および②が心停止の確率を左右すると結論づけている。なお、このCITとは、ある事象の成功例と失敗例を分析して、リスクファクターを浮き彫りにし、対応策を講じる危機管理術である。
上記のことから、動物の体型(脂肪量)、体質と麻酔中の心停止のとの関連性を明らかにするとともに、動物病院スタッフの性格、臨床経験、ストレス(過重労働を含む)などと麻酔事故の繋がりについても、科学的に検証することが非常に重要であると思われる。

獣医師を目指す学生時代の頃に、小動物臨床の各分野(外科、内科、画像診断など)に対する適性テストが行われると、「ヒト」を要因とした麻酔リスクの上昇を避けられるかも知れません。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29627202


