夏は、外気温が上昇する時期であり、近年では35℃以上を記録するような猛暑日も珍しくないため、ヒトもペットも熱中症に注意を払うことが大切である。また、万が一、熱中症に罹患した場合には、「体温が上がり過ぎて気分が悪そう」では済まない重症例にとなるケースもあり、①全身性の炎症、②凝固不全、③多臓器不全に陥り、致死的経過を辿ることがある。そのため、緊急性の高い熱中症は迅速な対応が求められるのだが、有効な治療法が確立されていないという現状がある。
そこで、イスラエルのヘブライ大学は、「ある仮説」を立て、犬の熱中症の重症度を決定するバイオマーカーに関する研究を行った。その仮説とは、熱中症における細胞障害に伴ってヒストン(DNAを安定化させるタンパク質)が細胞外に漏出して上記の症状(①~③)を発現するというものであり、臨床上健康な犬7匹と熱中症の犬16匹を対象として、血清中のヒストン濃度(serum histones、sHs)が測定されている。
研究の結果、熱中症を起因とする重症例(凝固不全または斃死例)では、健康な犬と比較して、sHsが有意に上昇していることが明らかとなった。つまり、sHsは、犬の熱中症のバイオマーカーとして有用であることが示されていることになる。そして、このsHsは薬理学的にコントロールできる可能性があり、ヒストンを分解する薬剤が開発されれば、「熱中症治療薬」が誕生することが期待できる。
今後、更なる研究が進み、sHs測定法および(血液中の)ヒストン分解療法が確立されるようになれば、熱中症治療のゴールドスタンダードとして、世界中に普及するかも知れない。

今回の研究を発端として、診断マーカーの開発が盛んになり、熱中症の致死的経過が無くなることを願っております。
参考ページ:
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs12192-017-0817-6


