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死亡リスクが高い生後3週間以内の子犬のコンディションを把握するための判断基準に関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬の新生仔では、出生から離乳期(生後約7-8週間)における死亡率が高く、生まれた個体の20%を占めるとされている。その中でも、3週齢までの死亡リスクが特に高いと考えられており、新生仔が亡くなることを予測できる判断基準を確立することは、獣医療の大きな課題と言える。しかし、「出生後3週目までの死亡リスク」に関する予測因子は明確ではない(出生から24〜48時間後までの予測因子としてのApgarスコアが報告されているのみである)。

そこで、フランスのトゥールーズ大学、犬の繁殖に関する研究所(Center of Canine Reproduction in South-West of France、CRECS)、ロイヤルカナン社は協力して、Apgarスコア(文末に詳細を記載、注1)を主体として、「生後3週齢までの死亡率」を予測できる判断基準について研究を行った。今回の研究には、347匹の子犬(66匹の母犬から帝王切開をせずに出生)が参加しており、全ての子犬は規格化された飼育環境で個別に育てられた。そして、始めに、出生後10分~8時間の間で、新生仔のApgarスコア、体重、血糖値、血液中乳酸塩濃度、血液中β-ヒドロキシブチレート濃度、直腸温、尿比重が評価されている。次に、Apgarスコアおよび体重を除く上記評価項目を出生24時間後に実施している。最後に、生後3週齢までの死亡率が記録として残された。

研究の結果、347匹中70匹の子犬(20.2%)が生後3週間までに斃死することが明らかとなった。この斃死例には、生存例と比較して統計学的に有意差は無かったものの、Apgarスコアが10点満点中9点以下および生後24時間後の血糖値が92mg/dL以下の子犬が多く含まれていることが判明した(生後3週間以内に死亡するリスクが高まることが示唆されている)。その中でも、Apgarスコアが6点未満または血糖値が50mg/dL未満の子犬は、生後24時間以内に斃死する可能性が高くなることも確認されている。

上記のことから、Apgarスコアに血糖値を加えた判断基準は、「3週齢までの死亡リスク」に対する予測因子の候補となり得ることが考えられる。ただし、統計学的有意差が明確となるように、Apgarスコアを細分化することが改善点として挙げられる。今後、改善点を克服して、現行のApgarスコアリングシステムの精度が上がることとなれば、死亡リスクを抱えた子犬を高い確率で検出して命を助ける予測因子に進化する可能性を秘めていると思われる。

 

注1

◆Apgarスコアリングのチェック項目と点数配分◆
1.粘膜の色
2.心拍数
3.呼吸数
4.刺激に対する反応
5.運動能力の評価
*各項目は3段階評価で、0~2点の数値で表現するポイント制であり、最低点は0点、最高得点は10点(2点 x 5項目 = 10点満点)である。

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高精度のApgarスコアリングが確立された場合には、ブリーダー、ペットショップ、動物病院の連携の強化が、「生後3週間までの命」を守るために重要となってくるかも知れません。

 

 

参考ページ:

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167587716306468


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