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犬の再生医療に必要な幹細胞を安定して供給できる生体内組織に関する研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床では、人医療と同様に、再生医療への関心が高まっており、外科手術や内科療法では治癒する可能性が低い神経系疾患(変性性脊髄症など)や骨癒合不全などを治療する手法として期待されている。そのため、再生医療に用いられる幹細胞の「数および質」の確保は、大きな課題となっている。

そこで、チリのサンティアゴにある大学であるUniversidad del Desarrolloは、犬の幹細胞を安定的に入手できる供給源に関する研究を行った。同大学は、以下の特徴がある「大網脂肪組織」から幹細胞(Mesenchymal stem cells、MSCs)を作成して、皮下脂肪組織由来のMSCsと比較して、「幹細胞としての能力」を検証している。

◆大網脂肪組織の利点◆

①犬の年齢、栄養状態、疾患の有無、病態などの影響を受けにくい(組織の量的変動が少ない)。
②一部を切除しても犬の健康維持や日常生活への支障を起しにくい。

 

研究の結果、大網脂肪組織由来のMSCsは、皮下脂肪組織由来のMSCsと同程度に、増殖因子(分裂能・増殖能)、血管新生因子(MSCsが移植組織に生着する力)、CD4陽性T細胞の抑制効果(移植後の拒絶反応を抑制する力)を発現することが明らかとなった。さらに、両組織由来のMSCsには相違点が認められ、大網脂肪組織由来の方が、同じ組織量から回収できるMSCsの数が多いことも判明している。

このことから、犬の再生医療にとって、大網脂肪組織は「安定した供給源」となることが考えられる。ただし、大網は開腹をしないと採取できないというデメリットがあるため、全身麻酔をかけられない症例を考慮すると、局所麻酔および最小限の術創で大網脂肪組織が摘出できるキットの開発が進むことを願っている。

安定した供給源の確立とともに、回収した幹細胞を長期培養・保存できる技術が開発されれば、不妊・去勢手術時に「将来必要になるかも知れない幹細胞」を事前に準備することが可能となると思います。

安定した供給源の確立とともに、回収した幹細胞を長期培養・保存できる技術が開発されれば、不妊・去勢手術時に「将来必要になるかも知れない幹細胞」を事前に準備することが可能となると思います。

 

参考ページ:

https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-017-1053-0


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