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新薬への期待~心疾患の病態を悪化させるリシルオキシダーゼの作用が解明される~

投稿者:武井 昭紘

ヒトおよび犬猫の心疾患において、高血圧(血圧上昇)、不整脈、リモデリングなどの病態の悪化に関与する酵素や因子を阻害・拮抗する薬剤による内科治療は、非常に重要な位置付けをされており、各症例の予後を左右する大きな要素の一つである。その中で、レニン-アンジオテンシン‐ アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System、RAAS)を制御する治療法は代表例であり、心疾患治療の中心を担うことが多い。しかし、心血管系の伝達経路には、RAASのみではなく、未知のものも含めて、様々な酵素・因子が関与している。そのため、多角的な視野をもって循環器疾患の病態を解析して、より効率的に、より効果的に心疾患を治療・管理できるようにすることが理想的(課題)である。

そこで、スペインのサン・パウ病院循環器科は、リシルオキシダーゼ(Lysyl oxidase、LOX)という酵素に着目して、心疾患の病態を解明する研究を行った。このLOXは、コラーゲンの代謝に関わる酵素であり、心疾患の病態を悪化させるのではないかとされているが、詳細が分かっていない因子である。今回の研究では、LOXを過剰に発現するマウス(TgLOXマウス)を用いて、心組織における病理的学的特徴について観察が実施された。すると、TgLOXマウスでは、加齢に伴って心筋のリモデリング(心肥大)が起こり、心拡張機能が障害されることが明らかとなった。さらに、TgLOXマウスの心組織では、以下に記載する現象も確認されており、LOXが心疾患と深く関わっていることが示された。

◆TgLOXマウスの心組織の病理学的特徴◆

1.酸化ストレスの増加
2.心筋保護因子であるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性の低下
3.心筋細胞のアポトーシスに関与しているとされる分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)ファミリーのp38の活性の増強
4.アンジオテンシンII誘発性心筋炎

上記のことから、LOX阻害薬が開発されて、臨床応用されることとなれば、ACE阻害薬などの降圧剤、利尿薬、カルシウム感受性増強薬(ベトメディン)などが中心となっている心疾患治療に選択肢が増えて、病態の進行を遅らせる(寿命を全う出来る)可能性が高まることが想定できる。また、犬猫の心疾患とLOXとの関連性(LOX阻害薬の開発を行う価値)について、研究が進むことに期待したい。

ACE阻害薬を始めとする既存の薬剤が奏功しない症例のために、LOX阻害薬に限らず、心疾患治療用の新薬が開発されることを願っております。

ACE阻害薬を始めとする既存の薬剤が奏功しない症例のために、LOX阻害薬に限らず、心疾患治療用の新薬が開発されることを願っております。

 

参考ページ:

http://www.fasebj.org/content/early/2017/05/18/fj.201601157RR


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