ヒトおよび犬猫の乳腺腫瘍(乳癌)には外科手術が適用されることがあるが、完全に癌組織を取りきれておらず再発となれば、再手術を検討することになる。このリスクを防ぐために、手術で切除した組織から染色した病理検査をサンプルを作製して術中にマージンを確認する迅速診断を行ったり、腫瘍組織周辺の正常な皮膚、皮下組織、筋膜、筋肉を切除して外部検査機関で病理検査を実施する対策が取られる。しかし、染色には時間がかかること(外部検査機関に依頼すれば日単位・週単位となる)、病理組織検査には経験が必要であること、経験者の間でも意見が分かれることなどの理由から、検査結果の再現性は完璧とは言えないのが現状である。
そこで、ワシントン大学は、組織像をデジタル化して客観性を高めるために、「光を用いた病理検査」を確立した。これは、光が物体に当たると反射または吸収されるという性質を利用したもので、癌細胞と正常細胞の光の反射・吸収の相違点を光音響顕微鏡(photoacoustic microscopy、PAM)により、画像化するというものである。同大学の研究では、乳癌組織における通常の病理組織切片の濃淡とPAMの画像での濃淡について解析が行われ、相関係数0.74(1が完全な一致)という強い関連性が示されている。さらに、PAMには、長径5cm未満(表面積55cm2未満)、厚さ1cmの組織であれば4分以内に撮影が終了するという特徴があり、染色をしないことでの大幅な時間短縮を実現している。
上記のことから、ヒトが染色作業を行って経験則の影響下で鏡検をする病理検査ではなく、「データ化された画像を基にしたデジタル解析」であれば、客観性・再現性が確保された迅速診断が可能となり、再手術のリスクや心配が軽減されることが予測できる。今後、ヒトの個人病院や動物病院でも「光による迅速診断」が実施できるように、PAMのシステムが簡素化されることに期待したい。

時間短縮と高い客観性を保たれた病理検査が、最小限の設備投資で実現できるようになれば、
*画像はイメージです(実際のPAMの画像は参考ページをご参照下さい)。
参考ページ:
http://advances.sciencemag.org/content/3/5/e1602168


