人医療および獣医療における内科治療に使用される薬物は、服用または投与後の血液中薬物濃度をモニタリング(治療薬物モニタリング、therapeutic drug monitoring、TDM)を行うことで、有効血中濃度を維持するとともに、中毒域に達しないように管理(用量・用法の調整)をすることが理想的だとされている。小動物臨床での例としては、犬のてんかんに対するフェノバルビタール、甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン製剤、心臓病に対するジゴキシンやβブロッカーなどが挙げられる。しかし、大学・研究所などの大規模な医療施設を除いて、血液中薬物濃度の測定は動物病院内できるものではなく、治療をしている動物から採血をして、血液サンプルを外部検査機関に送付する形式を取ることになる。そのため、経費が必要であることと同時に、「知りたい」と思ったタイミングと「実際に測定結果が出る」タイミングには時差が生まれ、リアルタイムではないという現状がある。
そこで、スイス連邦工科大学は、院内で実施できるTDMを開発して、安価かつ迅速に血中薬物濃度が測定できる技術を確立しようとしている。そして、同大学が研究に用いたものは、「蛍の光」と「デジタルカメラ」であるという点においても非常に特徴的な手技であると言える。蛍の光は、ルシフェラーゼという酵素が関与しており、高校の生物学でも学習する有名な発光システムである。
今回の論文では、このルシフェラーゼを対象の薬剤に結合させて発光させ、その光をデジタルカメラで撮影して、光の強弱・色で薬物濃度を測定するというものであり、現時点では、メトトレキセート(化学療法剤)およびテオフィリン(気管支喘息治療薬)でのTDMに成功しており、両薬剤ともに薬剤の代謝産物の影響は受けないとのことである。また、ヘモグロビンなどの血液成分がルシフェラーゼの発光に干渉しないように、血液サンプルをHEPES(ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸)を用いて10倍希釈するという手法も明記されている。
今後の研究によって、「蛍の光とデジタルカメラによるTDM」が多くの薬剤に適応できるとなれば、人医療および獣医療の両方において、薬用量の調整および管理に革新が起きることになる。また、上記の測定方法がTDMに限らず、中毒症状の原因物質の検出にも応用されることに期待したい。

一次診療の動物病院が既に所有している医療機器や電化製品で、TDMを含めた様々なモニタリングが実現すれば、収益を確保しながら「低価格」の「高度」な獣医療を提供できるようになると思います。
参考ページ:
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ange.201702403/full


