動物病院や見慣れないヒトが多い場所では、猫は血圧が生理的に上昇する傾向があるが、血圧が上がらないまたは低血圧の猫もおり、その場合には、生命に関わる重篤な病気を抱えていることがある。ただし、「低血圧症を伴う重症である」ということは分かるが、予後を明確に判断できない場合も珍しくなく、急死(斃死)となった症例も、奇跡的な回復を遂げた症例も経験されている先生方は少なくないと思う。そのため、罹患猫の経過を予測できる検査項目が確立されれば、治療成績の向上に繋がると同時に、インフォームド・コンセント(チョイス)にもエビデンスを織り込むことが可能となる。
そこで、アメリカのペンシルヴァニア大学は、低血圧の猫の予後に関連する因子に関して研究を行った。対象となった猫は、同大学の動物病院のICUに入院した症例(2005年1月~2011年12月までの間)である39件で、いずれもドプラー血圧計で動脈圧が90mmHg以下を示していた。この39例の猫は、2つのグループに分類され、血液中の乳酸塩濃度が基準値範囲(2.5mmol/L未満)の群12匹と高乳酸塩血症(2.5mmol/L以上)の群27匹とされた。そして、両群の5日間における生存率について、カプランマイヤー法(Kaplan Meier method)を用いて解析をした。すると、高乳酸塩血症の猫の生存率は17%であり、乳酸塩濃度が基準値範囲に収まっている猫(57%)と比較して、低いものであった。なお、乳酸塩濃度以外の因子として、年齢、体重、入院期間、PCV、疾患の重症度を検討したが、両群に有意差はなかったとのことである。
今後、この研究に基づいて、血液中の乳酸塩濃度と予後(入院して治療したら退院できるか)の判定に関するガイドラインが作成されれば、臨床現場において、重篤で助からないように見える猫(飼い主が自己の判断で諦めているケースも含む)でも、客観的データ(乳酸塩濃度)を明示して予後を判定することが可能となり、救える命が増えるかも知れない。また、院内で測定できる乳酸塩濃度の生化学検査用スライドや検査キットが開発されることに期待したい。

血液の成分で、予後が判定できるようになれば、簡便な検査で入院や自宅療養などのペットオーナーの希望を細かく汲み取ることが出来るようになるかも知れません。
参考ページ:
http://avmajournals.avma.org/doi/10.2460/javma.250.8.887


