ヒトおよび動物の神経細胞に損傷や切断が起きると、完全な再生には長時間を要したり、不完全な機能回復に留まることが多い。特に、脳や脊髄などの中枢神経系の損傷では、再生が困難であり、日常生活や仕事(ヒトおよびワーキングドックを含む)に支障が出る麻痺や機能障害が残る場合がある。また、リハビリテーションや理学療法などの治療法が適用されることもあるが、治療成績には個体差があり、再現性という観点から理想的な(効果が約束された)医療技術であるとは言えない。
そこで、ワシントン大学とオックスフォード大学は、銀でコーティングされた電導性かつ伸縮性ナノワイヤーを開発して、脊髄の機能を補う方法を確立するための研究を行っている。まず、両大学は、作製したナノワイヤーの伸縮性を光学電子顕微鏡で観察して、湾曲していない時と湾曲している時での構造学的変化が生じないことを確認した。さらに、電導性の評価を実施して、10cm長なまでのワイヤーにおいて細胞外記録による電気パルスの測定が可能であるデータを得ている。
次に、動物実験へと移行し、マウスの腰髄(L1-2)を切開して、背側表面から300μmまで下降した位置にナノワイヤーに設置した。このマウスを自由に運動させている状況下で、ISI(interspike interval、スパイク間隔)ヒストグラムによるナノワイヤーの電気生理学的解析を行うと同時に、マウスの腓腹筋の筋電図を測定した。すると、腰髄内のナノワイヤーに発生した電気パルスと腓腹筋の電気的活動が相関していることが明らかとなった。また、両大学によると、今回の研究で開発されたナノワーヤーは、マウスより大きな動物にも適用できる統計学的データを得ており、ナノワイヤーによる組織および細胞への有害事象は認められていないとしている。
上記のことから、人医療および獣医療にナノワイヤーが応用できるようになれば、変性性脊髄症などの難病や事故・災害に伴う神経の機能障害を「時間をかけずに完治」させることができるかも知れない。今後、研究が進み、将来的にナノワイヤーが「神経再生医療と肩を並べる」または「再生医療を超える」医療技術へと進展していくことに期待したい。

医療保険の適用を受けて、幹細胞による神経組織の「再生」とナノワイヤーによる神経組織の「再構築」を自由に選択できる未来が来ることを願っております。
参考ページ:
http://advances.sciencemag.org/content/3/3/e1600955


