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犬の社会的行動(優しさ)は相手との親密度に基づいて調節されているという研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトと犬は、紀元前からという長い年月を共に過ごしてきた。共存が可能であった理由の一つに「犬の優しさ」があるのではないかと思う。そして、犬に対する一般的なイメージ(飼育環境で形成された個別の性格は除く)と言えば、ヒトに良く慣れて、かつ従順であり、分け隔てなく(裏表無く)ヒトや他の動物に接するといったものである。しかし、この「犬の優しさ」は相手との親密度により、自在に調整できることが明らかになった研究が発表され、ヒトと同様の高度な社会的行動(相手と自身の関係を認識した上での加減された優しさの提供)をすることが示唆されたので、今回紹介したいと思う。

研究を行ったのはウィーン大学獣医学部で、トークンチョイスパラダイム(Token Choice Paradigm)というシステムを用いて、犬の行動を観察した。トークンとは月、星、鳥などを模ったボタン(シンボル)で、いずれかのトークンを犬の鼻(霊長類は手)で押すと報酬(食べ物)が得られるという行動実験のツールである。今回の実験では、2匹の犬を柵越しに配置して、一方の犬(ドナー)がトークンを押すと、他方(レシピエント)に報酬が渡されるという仕組みを作製して、ドナーとレシピエントの関係性(親しい犬や見慣れない犬など)を変化させることで、ドナーが報酬を渡す行動の頻度についてデータを蓄積していった。

その結果、ドナーは見慣れない犬に対しては報酬を与える行動が少なくなり、親しい関係にあるレシピエントに対しては有意に報酬を与える行動が増えることが明らかとなった。このことにより、犬の社会的行動である「食べ物を分け与える」という行為は、相手との関係性を考慮した上で、調整していることが推察できる。

上記の「調整可能な社会的行動」が、ヒトに対しても同様であるとするならば、災害時に活躍するレスキュー犬の育成にも利用できるかも知れない。つまり、レスキュー犬を地域密着で飼育・訓練することで、住民と犬の親密度を増せば、「親しい犬に食べ物を分け与える」こと同様に、「見慣れたヒトを全力で救済する」という最上級の社会的行動を提供してくれる犬となってくれるのではないだろうか。

犬の高度な社会的行動が研究で更に明らかになれば、医療レベルや災害におけるヒトの救済方法が飛躍的に向上するかも知れません。

犬の高度な社会的行動が研究で更に明らかになれば、医療レベルや災害におけるヒトの救済方法が飛躍的に向上するかも知れません。

 

参考ページ:

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0167750


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