猫の下部尿路疾患(FLUTD)は、臨床現場において頻繁に遭遇する泌尿器系の病気である。その中でも、尿路閉塞(尿閉)は急性腎不全・水腎症を併発して、重篤化するケースがある為、食餌療法や環境整備(多頭飼育への対策、ストレスとなる要因の緩和など)をすることで、予防措置を講じることが重要である。しかし、その状況においても、病態が悪化して、尿路閉塞を繰り返す症例もいるため、外科手術が適用される場合がある。
尿路閉塞に対する外科手術は、閉塞を起こす物理的な原因(結石、腫瘍など)を排除する尿路切開術や尿路の狭窄・閉塞をステントを設置することで防止する方法などが挙げられる。ただし、最終的な術式の選択は、執刀される獣医師の考え方および経験などにより、異なるのではないかと思う。そこで、今回紹介するFLUTDの外科手術に関する研究データをご覧頂き、術式を検討する際の一助となったら幸いである。
研究を行ったのはカリフォルニア大学およびペンシルベニア大学で、尿菅ステントを実施した猫26例(ステント群)と尿管切開術をした猫36例(切開術群)の術後経過を比較するという内容であった。そして、両群の術後1日目と退院時におけるBUNおよびCREの数値を統計学的解析がなされて、切開術群に比べて、ステント群で有意にBUN・CREが低下していることが明らかとなった。このことにより、血液検査の項目であるBUNとCREの数値を効果的かつ速やかに低下させたい場合には、尿管ステントが適していることが示唆されていると考えられる。
しかし、ステント群の6例(26例の約23%)では腹水が認められ、退院する時点の予後(生存率)に影響を及ぼすことも判明しているため、今後の研究では尿管ステントにおける合併症(腹水)の原因を解明し、予防対策を確立していくことが課題となっている。仮に、尿管ステントでの腹水の発生率を抑える術式が開発されれば、BUN・CREの数値に基づいて、尿管切開術および尿管ステントを使い分けて、FLUTDの治療・管理の幅を広げていくことも良いのではないだろうか。

血液性化学的に緊急を要する症例と比較的猶予のある症例において、それぞれで費用や予後などに関してベストな術式が用意できると獣医療は発展していくと思います。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27875083


