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ペットの痛みを伝えることで治療は進む

投稿者:武井 昭紘

臨床現場において、ペットの痛みを認識することは、骨折や交通事故などが原因であれば、容易である。しかし、運動不耐性、食欲不振などの非特異的症状から痛みを推察することは困難な場合もある。獣医師が痛みを推察することが難しい場合もあるのだから、ペットオーナーがペットの痛みを実感することは、更に大きな壁が立ちはだかるのではないだろうか。

もし、スムーズにペットの痛みを理解してもらうことができれば、治療方針の決定が早くなり、ペットが痛みで苦しむ時間が短くなるはずである。そこで、ペットオーナーに「ペットの痛み」を意識してもらうためには?をポイントとして、今回の記事を記載したい。

 

1.獣医師とペットオーナーの「痛み」の捉え方の違い

「痛み」という表現は、感情に訴える力が強い言葉で、ペットオーナーが否定しやすい(受け入れづらい)。診察の結果、ペットが痛みを抱えている可能性がある時は、「不快感」という表現に変えることで、ペットオーナーがペットの痛みを受け入れやすくなる。また、加齢で動きが遅くなることと痛みを感じている動きを混同しているペットオーナーが多いため、加齢(生理現象)と痛み(病的な現象)の違いを理解してもらう必要がある。そのために、人が経験する痛みに例えて、ペットの抱えるトラブル(痛み)を説明することが理想的である。

 

2.痛みに対して何をするかを伝える

痛みがあることを理解してもらった後は、どうするかを伝える。背中の痛みなどを例に挙げて、痛みをどう緩和させるか(ヒトでは湿布、安静、痛み止めなどを使用するはずである)を説明し、痛みを抱えているペットに何をするべきかをイメージしやすいようにする。

 

3.ペットが痛みを抱えている時にどう感じるかを伝える

全てのペットが痛みに対して、同じ反応をする訳ではない。そのため、ペットオーナーに「ペットの感覚」を伝える必要がある。一例としては、膝や臀部が痛い時に、排尿・排便をするとどう感じるか?と質問してみる。

 

4.痛みの証拠を認識してもらう

ペットが痛みを感じているかどうかについて、ペットオーナーに証拠を確認してもらうことは、「痛みの存在」に気がつくために重要なことである。飼育環境(家庭)において、いつもと同じ行動(動く、食べる、眠るなど)ができているか?好きなもの(オモチャなど)に反応するか?などをチェックしてもらうことで、「日常と異なる様子」を観察してもらうことが有力な証拠となる。そのための簡易的なツールとして、下記を参照してもらいたい。

a.Recognizing pain in pets

b.Signs of osteoarthritis in senior cats

 

5.経済的負担について相談

ペットに遣える金銭の上限、ペット保険加入の有無、注射薬・内服・サプリメントの必要性などを総合的に判断し、経済的負担を可能な限り軽減する方法を提示することも、「ペットの痛みを受け入れる」ための一つの要因となる。

 

6.観察したことや診察結果を書き出す

診察の結果でペットが痛みを抱えている場合には、家庭での痛みの証拠などをチェックし、ペットオーナーに痛みを実感(頭で理解)してもらうと同時に、書き出しで視覚的にも痛みを理解していくと、経過観察が可能となり、今後の治療方針に非常に役立つはずである。

 

7.痛みの発生源を示す

犬猫の骨格モデル(模型)を使用して、痛みが発生している場所を明確に示すことが、ペットオーナーにペットの痛みを深く理解してもらうための一助となる。

 

8.トライ アンド エラー

痛みの認識ができた後は、薬剤やサプリメントの効果を試していくように話を進めていくことが良いと考えられる。1つの薬剤で2週間の投薬期間を設定して、効果を判定していくことが望ましい。

 

9.環境整備(動物病院と家庭)

痛みを抱えているペットは、今まで(健康な時)の飼育環境では、生活がにづらくなってしまうことがある。そこで、ペットが居心地が良い環境(疼痛管理に利用できるベッドスリップ防止マットなど)を整備する必要がある。また、動物病院も罹患しているペットが痛みを感じにくくする設備や取り扱いをすることが求められる。

獣医学的な専門用語および治療方法のみを伝えるだけでは、ペットオーナーが納得しない(理解できない)場合には、上記のように、ペットオーナーとのコミュニケーションを始めるところから、ペットの疼痛管理はスタートすると良いのではないだろうか。

ペットの痛みなどの感覚を獣医師が代弁することで、ペットオーナーは病気や治療を受け入れてくれるかも知れません。

ペットの痛みなどの感覚を獣医師が代弁することで、ペットオーナーは病気や治療を受け入れてくれるかも知れません。

参考ページ:

http://www.vetanimall.jp/wp-admin/post.php?post=3953&action=edit


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