米国ではドナルド・トランプ大統領の関税政策により、ペットの維持費が物価上昇の影響を受けるのではないかと懸念し始めている飼い主や保護活動家がいるそうだ。
記事によると、米国の動物保護施設のデータベースを管理する非営利団体シェルター・アニマルズ・カウントの広報責任者トリ・フゲートは、かねてより経済状況はペットの放棄の要因となってきたが、関税の影響による経済的負担の増加が状況をさらに悪化させる可能性があると指摘。ペット関連の商品やサービスの価格が上昇すれば、ペットを手放すという悲痛な決断を迫られる飼い主が今後増える恐れもあると警告したという。
ペットシッターと飼い主を結び付けるアプリを運営する米ローバーが行った調査によると、調査対象となった飼い主の半数以上が、新たな関税によってペットにかかる費用が今後上昇することを懸念しており、4分の1以上がペットに必要なものの支払いをすでに心配しており、3人に1人がペットを養うために他の生活費を削っていた。
シェルター・アニマルズ・カウントのフゲートによれば、家庭にのしかかる経済的圧力と同じことが動物保護施設にも影を落としており、獣医用医薬品から餌、清掃用品、人員配置に至るまで、運営費が増加しているという。「こうした経費の増加により、動物保護施設にとっては増大する需要を満たすことが一層困難になっている。シェルター・アニマルズ・カウントは経済変動に連動する傾向を探るため、全国の動物保護施設情報を積極的に監視している」
ペットの養子縁組に特化した米非営利団体ペットスマート・チャリティーズと米世論調査会社ギャラップが共同で実施したペットに関する調査では、経済不安がすでにペットの獣医診療に影響を与えていることが示された。ペットスマート・チャリティーズのエイミー・ギルブレス会長はこの調査結果に驚き、次のように述べた。「52%、つまり調査対象となった飼い主の半数以上が、自分のペットに診療が必要だと思いながら獣医に行かなかったか、獣医に勧められた治療を断ったことがあるということだ。まさかそれほど多いとは思わなかった。その52%のうち71%が、治療を受けなかった理由として経済的な不安を挙げていた」
同会長はまた、飼い主の3人に1人が、必要な治療費を支払えなかったためにペットを亡くした友人や家族を知っていると報告したことに「衝撃を受けた」と語った。「これはペットにとっても、人間にとっても、そして獣医にとってもつらいことだ」
ペット保険は解決策になり得るのか?ペット保険が役に立つかどうかは複雑な問題だが、ほとんどの保険は、最終的な払い戻しを受ける前に動物病院での立替払いが必要で、これを選択できない飼い主も大勢いる。ギルブレス会長は、経済的な制約がある場合は最初から動物病院側と率直に話し合い、個々の経済状況に合わせた治療や支払いの選択肢があるかどうかを確認するよう、飼い主に勧めている。ペットスマート・チャリティーズは、代替支払いプランや安価な獣医治療の研究に投資するなどの活動も行っている。
ペットがもたらす計り知れない価値とはいうものの、米国人の多くはペットへの支出は有意義だと考えている。米ペット用品協会(APPA)が今年発表した最新の報告書によると、米国では犬や猫を飼育する世帯は9400万世帯に上り、2023年の8200万世帯から増加している。同国では51%の世帯が犬と暮らし、37%の世帯に猫がいる。
米国人は昨年、動物病院での治療や宿泊、グルーミング、しつけ、餌、消耗品など、ペット産業に1520億ドル(約21兆9000億円)を費やし、今年はその数字が1570億ドル(約22兆6000億円)に膨らむとみられている。
それでも、帰宅時の楽しい出迎えからソファーでの寄り添い、屋外での散歩まで、犬や猫との生活には言葉では言い表せない喜びがある。過去の研究では、ストレスや不安の軽減から認知力の向上、心臓発作や脳卒中の予後の生存率や平均寿命の延長まで、ペットと暮らすことによる健康上の利点が数多くあることが分かっている。実際、米非営利団体ヒューマン・アニマル・ボンド研究所が委託した調査によると、ペットと暮らすことで米国の医療制度は年間227億ドル(約3兆3000億円)節約できるという。
ペットと暮らすことは精神衛生にも良い影響を与える。英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)とケント大学による最近の研究では、ペットとの交わりは人生の満足度という点で、友人や親戚と定期的に会った場合と同様、年間最大7万ポンド(約1400万円)に相当する幸福感を得られることが示された。
ペットが私たちの生活にもたらす価値を認識するとともに、経済的に困難な時期でもペットが飼い主と一緒にいられるよう、全米の非営利団体がペットの食料配給や緊急獣医療への助成金、無料の緊急預り所、低料金の予防接種などのサービスを提供している。
犬や猫が家族の一員になると、ほとんどの人は維持のためにあらゆる手段を講じるだろう。しかし、ペットと暮らすには多額の費用がかかる。犬が10歳になるまでにかかる費用は平均で3万4550ドル(約498万円)、猫が16歳になるまでには平均で3万2170ドル(約463万円)かかる。
https://forbesjapan.com/articles/detail/79346
<2025/05/23 Forbes>
米国 経済不安でペットの維持費を懸念する飼い主が増加(写真と記事は関係ありません)



