耳血腫は、犬猫に見られる一般的な耳介のトラブルで、耳介に貯まる液体を減らし喰い止めることが治療になるとされている。そのため、如何にして液体の貯留を抑え込むのかが獣医学の課題なのだ。一方、話は変わるが、近年の科学技術の発展は目覚ましいもので、何らかの物理的刺激によって形状が変化し、その形状を記憶するスマート材料なるものが開発されている。そこで、疑問が浮かぶ。このスマート材料に犬猫の耳の形状を記憶させ、血腫が起きないように圧迫すれば、治療が成功するのではないだろうか。
冒頭のような背景の中、中国の大学および動物病院らは、耳血腫が発生した犬猫10匹にスマート材料による治療を適応する研究を行った。なお、同研究に採用されたスマート材料は、70〜90℃のお湯に浸けると形状が変化し、冷めると形状を記憶する性質を持っている。すると、以下に示す事項が明らかなったという。
◆スマート材料を用いた犬猫の耳血腫の治療◆
・麻酔下で耳介の毛を刈り消毒をして血腫を注射針にで吸引した
・スマート材料を耳介に押し付けて形状を記憶させた
・完成したスマート材料と耳介の縁を縫合して固定した
・スマート材料の装着期間の平均は16.3±4.6 日であった
・8匹(症例の80%)で治療が成功した
・残り2匹はそれぞれ治療開始7日目と10日目に再発した
・スマート材料を外すタイミングが早過ぎることが再発の原因だと思われた
・この2匹には新たに作成したスマート材料が適応された
・その後21〜23日目にスマート材料を外したが再発はなかった
・3匹で合併症が確認された
・1匹で耳介の局所にシワが残った
・6ヶ月間に渡り症例を追跡し再発が無いことを確認した
上記のことから、スマート材料による耳介の圧迫は耳血腫の治療に利用できることが窺える。よって、今後、耳血腫の治療に適したスマート材料やスマート材料の成形方法などがガイドラインに纏められ、当該疾患に悩むオーナーが居なくなることを期待している。

本研究では、ポリカプロラクトンというスマート材料が使用されております(スマート材料や治療の詳細につきましてはリンク先の論文をご参照下さい)。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39892399/


