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痛覚を失う程の椎間板ヘルニアに対する手術を受けた犬における理学療法の効果

投稿者:武井 昭紘

整形外科疾患や神経系疾患に対する外科手術を受けた動物は、低下あるいは喪失した身体機能を回復させるために、術後に理学療法へ臨むことがある。そこで焦点になることが、「理学療法で回復を早めることができるのか」ということである。時間も費用も掛けて効果無しでは、努力が無駄になってしまうのだ。果たして、理学療法には実践するだけの価値があるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ブラジルのサンタマリア連邦大学は、痛覚を失う程の椎間板ヘルニア(胸腰部)を発症して外科手術を受けた犬50匹以上を対象にして、理学療法の効果を調べる研究を行った。なお、同研究では、犬を①理学療法に臨むグループと②臨まないグループの2つに分け、①には下記のプロトコルを適用している。

◆理学療法の概要◆
1.術後すぐから72時間に渡って患部を氷嚢で冷やす(1回20分、1日4回)
2.以下のプロトコルを1回1時間、週2回のペースで実施
a.大腿筋を手でマッサージ(5分間、強さは犬の許容度による)
b.関節の可動域を増やすようにストレッチ(後肢を屈曲・伸展して20秒間保持)
c.エクササイズ(自転車を漕ぐかのように後肢を屈伸させる、屈曲と伸展で1サイクル、計30サイクル)
d.反射を生じる刺激を与える(肢間を摘んで刺激する、15回繰り返す)
e.反射的な運動をさせる(肢間を摘んで後肢を引っ込めようとしたら綱引きの要領で5回引っ張る)
f.大腿外側広筋と大腿二頭筋を中周波で刺激する(15分間)
g.水中での運動(後肢が動くようになった場合、1.5km/hで5〜15分間運動、体重を支える補助具あり)
h.芝生など様々な地面での歩行訓練(体重を支える補助具あり、犬が快適に感じるペースで3〜5分)
i.能動的な歩行訓練(数歩歩けるようになった場合、3mのマットレスを歩く、障害物やコーンあり)

理学療法は6〜60回繰り返された。結果、手術から21日以内に歩行機能を取り戻した①に属する症例の割合は10%であり、21日以降では約43%の症例が歩行可能となった。対して、②では21日以内に19%、21日以降に約62%が歩行可能となった。グループ間での有意差は認められなかった。

 

上記のことから、残念ながら、これ程に手厚い理学療法であっても効果は無いことが窺える。つまり、オーナーの希望に沿って理学療法を実施することを否定はしないが、過度な期待を持たせないことは重要だと思われるのだ。理学療法をするか、しないか。オーナーとよく話し合い、結論を出して頂けると有り難い。

①は30匹、②は21匹で構成されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39335238/


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