慢性的な呼吸器症状(上気道)を主訴に、10歳齢の猫(不妊メス)がアメリカの動物病院を訪れた。彼には、特筆すべき病歴があった。眼球摘出術を受けていたのだ。眼と鼻は非常に近い。この事実を意識しつつ、精査が始められた。
CBCに異常は無かった。一方、血液生化学検査では、高血糖と高グロブリン血症が確認された。また、CT検査にて眼球を摘出した側の眼窩内に嚢胞が発見された。この嚢胞は、瘻管形成と鼻甲介の破壊を伴っていた。そして、鼻腔の生検サンプルからは緑膿菌が検出されるとともに、リンパ球性および好中球性の鼻炎、浮腫が発覚した。嚢胞を切除する手術が必要だと判断された。
嚢胞の病理組織検査が行われると、驚くべきことが判明した。嚢胞には殆ど全ての眼の構造が含まれていたのだ(正常な三次元構造ではない)。眼球を摘出してなお、それと似た構造が病変部にあったのである。幸いなことに、手術から数週間後の経過は比較的良好であった。術野から何らかの分泌物が染み出してくることはなかった。
論文を発表したアイオワ州立大学は、「不完全」な眼球摘出術に起因した呼吸器症状(上気道)を呈した猫として初めての症例だと述べる。眼球摘出術で涙腺、結膜、眼瞼縁を切除しなかったことを「不完全」だと訴える。裏を返せば、これらを切除することは合併症を防ぐために重要だと主張しているのだ。万が一、「不完全」という条件に合致する猫が謎の呼吸器症状を呈した場合は、今回紹介した症例を思い出して頂けると幸いである。

術後の再診にて、本症例の鼻孔には軽度の鼻汁(慢性的なもの)が付いていたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39649741/


