慢性腸症(Chronic inflammatory enteropathy、CIE)は犬に良くみられる消化器疾患で、文字通り慢性、且つ、再発性を有する病気であり、腸粘膜の炎症反応が病態に深く関与していると考えられている。しかし一方で、罹患犬の腸から採取した生検サンプルを用いた病理組織検査をもってしても、治療方針の決定、予後や臨床的寛解の可能性の判定をすることを難しいとされているのだ。臨床上健康な犬とCIEの犬の腸組織の状態は異なる。だが、そこから治療や予後に関するヒントを得ることは容易ではない。このジレンマを解消する手立てはないものだろうか。
冒頭のような背景の中、コロラド州立大学は、①臨床上健康な犬と②CIEの犬の腸生検で採取したサンプルに存在するRNAを解析し、両群の腸組織を構成する細胞の相違点を調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬のCIEに関与している可能性のある細胞◆
・①に比べて②の腸では組織に常在しているT細胞よりも常在していないT細胞の割合が増加していた
・①に比べて②の腸に分布する好中球では炎症に関わる遺伝子(SOD2、IL1A)がより発現していた
・①に比べて②の腸では上皮細胞にストレス反応が強くみられていた
・その結果、②の上皮細胞が有する代謝機能に変化が生じていた
上記のことから、①と②の腸組織はRNAレベルで異なる特徴を持つことが窺える。よって、今後、この相違点の臨床的意義を解明する研究が進み、CIEの診断、治療、予後判定に新たな見解が追加されることを期待している。

本研究では、35000個以上の細胞を調べたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38933260/


