犬の眼科疾患、自発性慢性角膜上皮欠損症(spontaneous chronic corneal epithelial defects、SCCEDs)はボクサーという短頭種に多いことから、別名ボクサー潰瘍と呼ばれている。そこで、疑問が浮かぶ。このSCCEDsは何もボクサーだけの病気ではない。他の犬種にも起きるのだ。ボクサーが発症するSCCEDsと、他犬種が発症するSCCEDsには相違点があるのだろうか。
冒頭のような背景の中、イギリスの大学および動物病院らは、過去5年間(2018年1月〜2022年12月)に同国内の高次診療施設にてSCCEDsの治療を受けた短頭種の診療記録を解析する研究を行った。すると、420匹、眼の数にして464例のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆短頭種のSCCEDs◆
・①173匹(眼の数にして200例)がボクサーであった
・②247匹(眼の数にして264例)がボクサー以外の短頭種であった
・①の発症年齢は中央値で8.2歳(4.5〜12.7歳)であった
・②は中央値で7.2歳(1.6〜15.9歳)であった
・②に比べて①は有意に高い年齢で発症していた
・選択された最初の治療法は両群で異なっていた
・綿棒でのデブリードを除いて②よりも①で治療が成功する可能性が有意に高かった
・①の9.6%は複数回の治療を要した
・②の13.4%は複数回の治療を要した
・①の4%で合併症が確認された
・②の9.5%で合併症が確認された
・②では最初の治療で合併症が起きる可能性が高かった
上記のことから、ボクサー以外の犬種はボクサーよりも若くしてSCCEDsを発症し、複数回の治療を要する可能性や合併症が起きる可能性が高いことが窺える。よって、今後、これらの相違点が生じる要因について研究が進み、SCCEDsがより深く理解され、合併症が少なく成功率の高い治療法が考案されることに期待している。

診療記録に記載のあった治療法は、綿棒でのデブリード、ダイヤモンドバーでのデブリード、角膜切開術各種が含まれております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39161042/


