イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)の研究によると、不妊手術を受けた犬は、手術を受けていない犬に比べて約3倍、尿失禁をおこしやすくなるという。子宮蓄膿症や乳腺腫瘍を防ぐ目的で実施される不妊手術で、かえって尿失禁のリスクを抱えてしまう。これは、由々しき事態である。尿路感染症や尿やけを併発すれば、医療費の高騰を伴って、オーナーや犬の福祉を悪化させる大きな問題へと発展するのだ。そこで、疑問が浮かぶ。この尿失禁のリスクを抑える手立てはないものだろうか。
冒頭のような背景の中、同大学は、大規模臨床データベースVetCompassに登録されているメス犬30000匹以上の診療記録から、3ヶ月齢~18ヶ月齢までに不妊手術を受けた個体1500匹のデータをランダムに抽出し、不妊手術を受けるタイミングと尿失禁の発生リスクとの関連性を調べる研究を行った。なお、同研究では犬を①6ヶ月齢までに不妊手術を受けたグループと②7ヶ月齢~18ヶ月齢までに不妊手術を受けたグループの2つに分けて比較している。また、品種、執刀医(動物病院)、ペット保険の加入状況、持病(慢性疾患)に偏りがでないように、両群に属する犬は選定されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬が不妊手術を受けるタイミングと尿失禁の発生リスクとの関連性◆
・612匹(約41%)が6ヶ月齢までに不妊手術を受けた
・888匹(約59%)が7ヶ月齢~18ヶ月齢までに不妊手術を受けた
・①に比べて②における尿失禁の発生リスクは0.8倍と低かった
・つまり②の方がリスクを20%低く抑えていることになる
上記のことから、①よりも②、言い換えると「不妊手術を受けるタイミングを遅らせること」で尿失禁の発生リスクは低下することが分かる。よって、今後、乳腺腫瘍の発生リスクとの兼ね合いになるが、最も適した不妊手術の実施時期について再度議論され、乳腺腫瘍と尿失禁の双方のリスクを最小限に抑えた不妊手術が実施されるようになることを期待している。

不妊手術を受けた犬は体重が増えて肥満になりやすく、この体重増加は尿失禁のリスクを上げるとされておりますので、術後の体重管理には充分な注意を払いましょう。
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