嘔吐と便秘を主訴に、6歳のブリティッシュ・ショートヘア(去勢オス)が中国の動物病院を訪れた。血液検査の結果、軽度に好中球および単球が増加していることが判明した。つまり、彼は炎症を抱えているようであった。炎症が起きている場所の特定が始まった。その一環で膀胱の造影検査が行われた。外尿道口からカテーテルが挿入され、イソヘキソールが注入される。レントゲンには、造影された膀胱と結腸に詰まった大きな糞塊が写っていた。
一方、超音波検査では不思議な所見が得られた。無エコーの領域が2つ。両者は繋がっていないように見えた。まるで、膀胱が2つあるかのようであった。2つ目?の膀胱から液体を採取する。その性状は膿性で、鏡検にて変性性好中球が確認された。試験開腹で状況を把握する必要があると判断された。
膀胱と思しき臓器は、正常な位置に無かった。代わりに、腹部の中央に嚢胞状構造が一つあった。穿刺して内容物をチェックする。尿が採取され、膀胱であることが明らかになった。もう一つの嚢胞は膀胱の後方、腹部大動脈に接近したところに位置していた。幸い、この臓器(組織)に繋がる太い血管は無く、毛細血管から血液を供給されているようであった。周囲の組織から嚢胞を分離する。大きさは、4.8cm×4.7cm×2.7cm。驚くべきことに、病理組織学的検査で「この嚢胞も」膀胱であることが分かった。また、この嚢胞(膀胱)では重度の肉芽腫性炎、線維組織の増殖が確認された。
術後、セフェム系抗生剤が静脈から3日間投与された。経過は良好。手術から16日目には食欲と活動性が正常化した。論文を発表したアメリカおよび中国の大学らは、本症例に起きた「膀胱の重複」の原因は発生学的なトラブルであるかも知れないと述べる(根本的な原因は不明)。果たして、この病的現象は、どれくらいの確率で生じるのだろうか。今後、原因と有病率を明らかにする研究が進み、診断・治療・予防に関する情報がアップデートされることを期待している。

本症例には停留精巣(腹腔内、右側)の病歴があり、ヒトの症例を考慮すると、この停留精巣と膀胱の重複は関連しているかも知れないとのことです。
参考ページ:
https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-024-04178-6


