犬に良くみられる急性下痢は殆どの場合、軽度であり自然に治癒する。そのため、重症の症例を除き、当該疾患に抗生剤を処方する必要性は無いとされているのだ。しかし、ある調査によると、軽度の症例の半数以上に抗生剤が処方されているという。そして、この不適切な処方には要因があると言われているのである。果たして、その要因とは何であろうか。
冒頭のような背景の中、デンマークの大学および動物病院らは、犬の急性下痢に対する抗生剤の処方状況を調べる研究を行った。なお、同研究では、病気の愛犬に何か薬を処方してくれるというオーナーの期待と、その期待を一身に受ける獣医師のプレッシャー(認識)に着目して、彼らにアンケートを依頼している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆急性下痢を呈した犬に対する抗生剤の処方に関するオーナーの期待と獣医師の認識◆
・99例のデータが集積された
・オーナーの回答率は91%(90件)であった(①)
・獣医師の回答率は63%(57件)であった(②)
・①の7%(6件)のみが抗生剤の処方してくれると期待していた(③)
・③の2件で抗生剤が処方されないことに対する不満があった
・②の5件で獣医師はプレッシャー(抗生剤の処方を期待されているという認識)を感じていた(④)
・④の3件はオーナーの期待と一致していた
・④の2件はオーナーの期待を誤って想像してプレッシャーを感じているだけだった
・抗生剤を処方しない例が大勢の中で①の80%(72件)は診療全体に満足していた
上記のことから、病気の愛犬に抗生剤を処方してくれると期待しているオーナーは少数であることが窺える。また、獣医師が感じるプレッシャーの一部は誤解であることも分かる。よって、不要な抗生剤の処方を避けるために、獣医師は急性下痢に対する治療について(抗生剤に意味は無いことを)充分に説明する姿勢を持ち、オーナーの期待について想像を膨らませ過ぎないように注意を払う必要があると思われる。

①の20%は軽度~重大な不満を抱えております。不満を掬い取るように慎重なコミュニケーションを図りましょう。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39260739/


