2日間続く嘔吐と元気消失を主訴に、11歳齢のマルチーズ(去勢オス)が韓国の動物病院を訪れた。診察の結果、超音波検査にて消化管の閉塞が疑われた。位置にして、胃の幽門部。胃壁の肥厚を伴った腫瘤性病変が確認された。低エコー源性で、且つ、造影されない病変であった。一体、彼の身に何が起こっているのだろうか。
刻々と病状が悪化するため、外科手術が適応された。腫瘤を切除し、胃と十二指腸が吻合される。すると、閉塞も臨床症状も改善した。また、幸いなことに合併症も発生しなかった。切除した組織の病理検査が行われる。膿瘍であることが判明した。何故、膿瘍が生じたのか。それが問題であったが、病理検査にヒントが隠されていた。切除した組織の中に異物が存在していたのだ。顕微鏡で観察するからこそ分かる、決して肉眼では視認できない「結晶性の」異物であった。
日常生活を送る環境の中で、オモチャや家具など食べ物ではないものを動物は口にすることがある。通常、それを丸ごと飲み込まなければ消化管閉塞など起きないと考え、これらの破片が胃に入ってしまうことを気に留めるオーナーは少ないかも知れない。しかし、症例を発表した韓国の大学らは、その破片が膿瘍に発展して閉塞を起こしたと推測する。果たして、この一連の病的現象は稀な出来事なのだろうか。今後、類似の病態を持つ症例の有無が調査され、結晶性異物の臨床的な重要性が議論されることを期待している。

リンク先の論文にて結晶性異物の画像をご覧ください。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2024.1427218/full


