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犬の変形性関節症に対する非晶質炭酸カルシウムの効果を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

変形性関節症(osteoarthritis、OA)を患った関節を構成する軟骨は、pHの変化に曝されると言われている。具体的には、健康であれば弱酸性(6.9~7.2)のpHが保たれるが、OAが生じた関節の軟骨では炎症に関与する因子と嫌気性の代謝(解糖)によって大幅に酸性化(最大pH5.5まで低下)するとされているのだ。そして、このpHの変動は悪循環を齎す。軟骨の代謝に影響を与え、基質の合成を妨げるのである。そのため、OAの治療法として「軟骨のpHを正常化する」という手法が効果的だと考えることができるのだ。では如何にして、それを実現すればよいのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イスラエルの動物病院およびバイオテック企業らは、ザリガニの外骨格の維持に大きな役割を発揮する非晶質炭酸カルシウム(Amorphous calcium carbonate、ACC)に着目し、同物質をOAの犬に経口投与する研究を行った(56日間)。なお、ACCはpH7.35未満で溶解してカルシウムと炭酸塩を発生させ、最終的にプロトンと炭酸塩が結合して重炭酸イオンを生じさせる特徴を有している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬のOAに対するACCの効果◆
・Canine Brief Pain Inventory(CBPI)という疼痛スコアを用いると治療成功率は約46%であった(プラセボ群は約21%)
・Client Specific Outcome Measure(CSOM)という評価スケールを用いると治療成功率は約64%であった(プラセボ群は約31%)
・治療成功率の数値に差異はあるが統計学的な有意差は無かった
・母集団(36匹)の少なさが統計に影響していると推察される

 

上記のことから、大規模な臨床試験の必要性はあるが、ACCが犬のOAに対する治療薬になり得ることが窺える。よって、今後、同薬剤の効果を最大限に発揮する用法・用量について議論され、OAの痛みから解放される犬が増えることを期待している。

ACC投与群の4.5%(1例)は疼痛が改善せず治療失敗となっております(疼痛はオーナーによる評価)。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38983767/


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